人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ドバイ・ショックが世界を騒がせた本当の理由

ドバイ・ショックが世界を騒がせた本当の理由
ドバイ・ショックが世界を騒がせた本当の理由_e0009760_11111716.gif

最大で約700倍のレバ 2009年11月下旬、リーマン・ショックから約1年が経った頃、ドバイ・ショックで世界の市場に動揺が走りました。

 ドバイ・ショックの発端は、ドバイ首長国の政府系投資持株会社ドバイ・ワールドが債務の返済延期を債権者に求めたことに始まります。これにより、ドバイへの投資が多かった欧州の金融機関の株価が急落し、為替相場は円高へ急激に進行しました。

 しかし、1週間もすると市場は落ち着きを取り戻し、ドバイ・ショックは一過性のものだったという見方が広まりました。リーマン・ブラザーズの負債総額は約6000億ドルに対し、ドバイ・ワールドの負債は約600億ドルです。リーマン・ショックに比べると債務の規模ははるかに小さいのにも関わらず、なぜ世界の市場に大きな影響を与えることになったのでしょうか。

中東地域特有の情報の不透明性
 この大きな原因として、中東地域特有の情報の不透明性が挙げられます。昔から中東地域では情報開示の必要性がなかったので国や会社の財務状況を公開する習慣がなく、欧米とは異なる考え方を持っています。

 だからといって情報公開に対して否定的ということではなく、そもそも情報公開をするという考えがなかったというほうが正しいでしょう。そのため、マイナスの大きなニュースが流れた時には情報の不透明性によって市場に不安が広がりやすいという傾向が見られます。


 しかし、世界からお金が集まるようになった今では情報開示は不可欠です。透明性の欠如は大きな問題であり、近年は情報開示を進めて透明性を高めるように少しずつ変化しています。昨年にドバイ政府が国の財務状況を初めて公開したのも変化の現れの一つです。

 情報が少ないと噂が飛び交い憶測が憶測を呼んで悪循環に陥ります。「まだ他にも何か出てくるかもしれない」と市場に余計な不安が広がるのは良いことではありません。今後、透明性を向上するための取り組みが行われ情報の非対称性が改善されることが期待されています。

先行きの不透明感が強まり市場に不安が広がった
 他の原因としては、ドバイ・ワールドは政府系企業であるため融資した投資家がデフォルトの可能性を考慮していなかったことが挙げられます.

以前から資金繰りの悪化は伝えられていましたが、資金調達が困難になってもアブダビが資金を供給するだろうと考えられていました。

 もしドバイ・ワールドがデフォルトすれば、融資している企業の決算は悪くなります。また、ドバイ政府やアブダビ政府がドバイ・ワールド救済するために保有資産を売却すれば世界経済に思わぬ影響を与えると考えられ、先行きの不透明感が強まり市場に不安が広がりました。

 12月7日、Gulf newsによるとドバイ首長国財務庁のアブドル・ラハマン・アル・サレハ長官(Abdul Rahman Al Saleh)は「法的な書類に政府がドバイ・ワールドの負債の保証をしないと明記している」と述べています。また、「ドバイ・ワールドは債務を再構築し同社の資産を売却することで今回の問題を解決できるだろう。ドバイ政府は同社の救済のために資産を売却しない」とコメントしています。

ドバイ・ワールドの事業再編に注目
 ドバイは上記の問題に直面していますが、これによって今までドバイが積み重ねてきたものがなくなるということはありません。

 たとえば、観光の面から見てみると、ドバイのホテルの客室稼働率は09年第1四半期は73%、第2四半期は72%でした。リーマン・ショック前は80~90%と高い水準にあり、この時と比べると稼働率は落ちているものの、ドバイから観光客が全くいなくなっているのではないと分かります。2009年は景気の影響もあり日本人観光客は減少していますが、アジア圏では特にシンガポールや香港からドバイへ旅行する人が増えています。

 通商弘報によると、2008年には日系企業が10社ほど撤退する一方で、約30社が新規進出しました。観光都市としての華やかな部分が取り上げられることが多いですが、ドバイは商業都市としての機能も備えています。

 昔から交易活動の拠点であったことを生かして中東地域で初めてフリー・ゾーンと呼ばれる経済特区を作り、外資が進出しやすい環境を整えたことで、世界中から人やモノが集まるようになりました。ジュベル・アリ港のジュベル・アリ・フリー・ゾーンには6000社以上の外資系企業が入居しています。フリー・ゾーンの成功によって、ドバイは物流、再輸出拠点として大きく発展しました。

 さて、ドバイ・ショック後のドバイ・ワールドの動向ですが、ドバイ・ワールドの債権者は、アブダビ・コマーシャル・バンク、エミレーツNBD、HSBC、バークレイズ、クレディ・スイス、ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド・グループなどと言われています。

 ロイターによると、ドバイ・ワールドは、12月21日に債権者との会合を開き、2010年1月半ばに債務返済の一時停止を要請する方針を伝えました。負債の規模に対して必要以上に大きく報じられたことは事実ですが、ドバイ・ワールドの問題が解決するにはまだ時間が必要です。ドバイ・ワールドの事業再編の具体的な内容については発表されていないため、今後の動きが注目されています。
内藤 美穂
by momotaro-sakura | 2010-01-06 11:11 | ブログ