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 ギリシャの債務問題が明らかになってから-藤田正美の世の中まるごとOB

 ギリシャの債務問題が明らかになってからというもの、「日本は大丈夫なのか?」という記事を見かける機会が増えたように思う。さすがに2010年度末で国と地方を合わせて借金がほぼ1000兆円に達するとなれば「個人の金融資産が1400兆円あるのだから大丈夫だ」という声を信用する気にはなるまい。

 ギリシャは国債を発行して債務不履行に陥ることは何とか避けた。しかし借金するためには高いコストを払わなければならない。直近の金利は、やはり借金国であるポルトガルよりも2%ポイントも高く、ドイツが払う金利の2倍だった。

消去法で国債を買っているだけ
 さて問題である。ギリシャがそれほど高い金利を払わざるをえないのに、ギリシャよりも財政状況がはるかに悪い日本はなぜ低金利で借金できるのだろうか。その答えは、要するにほとんど国内で国債を買っているからだ。2008年12月末の時点で、国債残高のうち外国持ち分はわずか7%に過ぎない。銀行や生保、公的年金、日銀、家計、年金基金などが残りを保有している。

 民間金融機関は、大企業の資金需要がないために、資金の運用先に困って国債を買っている。みずほ証券のチーフエコノミストである上野泰也氏が「消去法で国債を買っているだけ」と発言していたが、その通りだと思う。

 国内で国債を消化しているために、市場が日本政府に対して「節度」を求めるとか、金利を引き上げて「自制」を促すというようなことが起こりにくい。それでも問題は、いつまで家計などが国にカネを貸せるのだろうかということである。個人金融資産1400兆円といっても、そこには負債(住宅ローンなど)が含まれているから実際には1000兆円程度と言われる。ということになるともうほとんど余裕はないことになる。

 そうなれば海外の投資家に日本の国債を売らなければならないのだが、格付け会社は日本の格付け見通しを引き下げの方向と発表しているから、海外投資家に国債を売ろうとすれば金利の引き上げを要求される可能性が非常に高くなる。

 そう考えると、元大蔵事務次官を日本郵政のトップに起用した郵政民営化見直しというのは、国債発行の財布を持っておこうとする政府の「陰謀」なのかと勘ぐりたくもなる。郵貯や簡保は資金量で言えば300兆円。その8割は国債で運用されている。そして民営化見直しの中で、現在は最大1550万円という郵貯の預け入れ限度額を3000万円にする方針だという。

 もしこうしたことを実現すれば、金融という最も国際的な競争にさらされる産業の構造を歪めることは明らかだと思う。しかも結果的に郵貯や簡保に資金が集まったとしても、それで国債発行が楽になるわけではあるまい。なぜなら結局カネの出所は1つ、つまりは国民の財布だからである。民間銀行に預けられていた貯金がゆうちょ銀行に移動するだけである。資金そのものが増えるわけではない。
この中に、こんな一文があった。「どの税金を上げようが、経済成長なしに日本は財政の悩みを解決することはできない」

 もちろん鳩山政権もそれは承知しているはずだ。だからこそ成長戦略を昨年末に発表した。ただ、その戦略をどう実現するのか、という具体的な内容についてはこの5月にも明らかにするのだという。

 そこに2つの問題がある。市場がそれまで待ってくれるのかということ。そしてもう1つは、その成長戦略の肉付けで市場が納得するのかということである。

 もし投資家の説得に失敗すれば、長期金利の急上昇という自体にもなりかねない。そうなれば国債相場は暴落し、金融機関は巨額の評価損を抱えることになる。もちろん株価も急落するだろうし、信認を失った円も安くなる。そうなったら少し上向いてきた景気が足元をすくわれ、二番底へ真っ逆さまである。

 情勢が急を告げているのに、「国民の皆さまとの約束を守る」と言い続ける鳩山首相に、いらだちを感じてしまう。何と言っても国民にとっては、この夏の参議院選挙で「消去法」で選ぼうにも、選ぶ政党がないのである。

by momotaro-sakura | 2010-03-24 18:17 | ブログ