自己血貯血(無輸血手術)


自己血貯血(無輸血手術)
 心臓外科手術は大きな手術であるものの,できるだけ同種血輸血(他人の血液輸血すること)を回避するよう努めています。同種血輸血を回避するためには術中、術後の出血量を減らすことが最も大切ですが、人工心肺装置によるロスや、思わぬ出血により同種血輸血が必要となる可能性は常にあります。自分の血液を手術前に貯めておいて手術時に使用する自己血輸血を行えば,同種血輸血を行わないで手術を終えられる可能性が高くなります。自己血輸血だけで手術を終えることができれば,同種血輸血に伴う輸血後肝炎等のウイルス感染やGVHD(拒絶反応)などの重篤な輸血副作用を回避することができます。
九州大学病院では他施設に先駆けて20年前の1984年より自己血貯血法を開始しました。待機的に手術が可能な弁手術や冠動脈バイパス術,成人先天性心疾患症例では,患者さんとご相談の上,ほぼ全例に自己血輸血を準備しております。自己血輸血を行った患者さんでは,ほとんどの場合,同種血輸血を回避できております。また,小児症例でも,心臓カテーテル検査時に採血する等の工夫をして,積極的に自己血を貯血し,同種血輸血を回避するように努めております。
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1.輸血とは
血液は大きく細胞成分(赤血球、白血球、血小板)と血漿成分(蛋白成分、凝固因子など)に分けられます。赤血球は身体の中に酸素を運ぶ役目を、白血球は細菌やウイルスなど、外からの侵入を防ぎ自分の体を守る働きを、血小板は傷口からの出血を止めます。血漿成分は栄養分の保持や止血などに働きます。この血液成分を治療のために使うのが輸血です。
輸血は、病気が原因で自分自身の必要な血液の成分を作ることができないときや、病気によって血液の成分が大量に失われるとき。また、怪我などにより急激な出血が起こったときや、手術のために出血したときなど、必要な血液成分を補う目的で行われるものです。
 
2.輸血の危険性
感染症(肝炎ウィルス、エイズウィルス、成人T細胞性白血病ウィルスなど)を除外するための検査を行っているにもかかわらず、感染の可能性が全くないわけではありません。(輸血後肝炎の頻度は約0.2%、エイズウィルスや成人T細胞性白血病ウィルス感染の可能性は極めて少ないですが、可能性が全くないわけではありません。)免疫の機能が極端に低下している患者様では、サイトメガロウィルス感染も生命に危険を及ぼすような肺炎を引き起こす可能性があります。
また、他人の血球成分(赤血球、白血球、血小板、血漿蛋白など)に対するアレルギー反応のため、軽症の副作用(悪寒、発熱、蕁麻疹など)から、重篤な副作用(溶血性輸血反応など)が起こる可能性があります。さらに、頻回に血小板輸血を行うと血小板に対する抗体が産生され、血小板不応状態(輸血しても効果が得られない状態)になることもあります。
 輸血後移植片対宿主病(GVHD)は、輸血製剤中のリンパ球が患者さんの体を攻撃・破壊し、致命的な経過をとる疾患で、年間に全国で数十例が発症しています。
 
3.無輸血治療プログラムの目的
医療は基本的には医療行為を受ける側と施す側との信頼関係であり、いたわりの気持ちこそ不可欠のものです。当院では患者様に適切な医学的情報を公平に与え、患者様の望まないこと、承諾をしていないことは決して行ないません。当院の目指すところは、患者さんの意思を充分に尊重した上で、安心できる最良の医療技術を提供することです。
 
4.無輸血治療プログラムの方法
 
高度な医療技術・医療機器
当院では、輸血を行わない手術を成功させるために高度な医療技術持ったスタッフと最新の医療機器を備えています。
 
貯血式自己血輸血
あらかじめ手術の前に患者さんから血液を採血し、貯えておいて、手術の時に戻す方法で、最もよく行われる方法です。
 
希釈式自己血輸血
通常体の血液には余力があり、手術で麻酔がかけられてから、この余力の部分の血液を採血して貯めておき、代わりに採血量に見合った血漿増量剤を点滴して血液を薄めます。手術中には“薄い血液”を出血させ、輸血が必要になったときに、手術のはじめに採血した自分の血液を輸血する方法です。
 
術中回収式自己血輸血
手術中に出血した血液を吸引回収し、生理食塩水で洗浄、きれいになった赤血球を戻す方法です。ただし、短時間に大量の血液が出血するような場合(心臓・血管系の手術など)に行います。
 
輸血に変わる薬剤投与
輸血に変わる薬剤等の治療法がある場合は、輸血以外の治療を行い、場合によっては、輸血をしないで経過を観察致します。
 
エリスロポエチン
人体は出血や鉄分の欠乏などで貧血になったとき、赤血球の産生を増やそうとする働きがあります。その働きを促進させる物質として腎臓から産生されるエリスロポエチンが知られています。エリスロポエチンは人工的につくられ、製剤として貧血等の治療に使われています。
エリスロポエチン製剤は人の組織や血液から取り出したものではなく安全製剤です。副作用は希ですが、ときに血圧上昇、動悸、湿疹などがあらわれることもあります。
 
術中・術後の管理
上記のようなさまざまな方法はもちろんですが、術中・術後の充分な全身状態の管理(呼吸・循環・栄養等)により、無輸血の治療が行われます。
 
無輸血治療プログラムについてのお問い合わせについては
大和成和病院
電話046-278-3911(代表)にご連絡下さい。
by momotaro-sakura | 2010-07-11 17:02 | 健康管理/先端医療