「小沢一郎」はなぜ負けたか 政治部長・乾正人

「小沢一郎」はなぜ負けたか 政治部長・乾正人
2010.9.15 02:55産経ニュース
 やれやれ、やっと終わった。

 7月11日の参院選、いや鳩山由紀夫前首相が退陣表明した6月2日から続いた民主党内の権力闘争はようやく一区切りついた。

 一国の宰相の座をかけた戦いほど面白いものはない。今回は民主党の生みの親だと自他ともに認める鳩山氏が、菅直人首相と小沢一郎前幹事長との間に立って報われぬ調停役というピエロを演じたために、権力闘争につきものの愛と憎しみ、信頼と裏切りに涙と笑い(嘲笑(ちょうしょう)ではあるが)が加わった。

 さらに女性議員の醜聞が週刊誌をにぎわせ、役者の器量はともかく、ドラマとしては大いに楽しめた。メディアが代表選を派手に扱ったおかげで、菅内閣支持率が急上昇するおまけまでついた。

 だが、3カ月以上の権力闘争によって、国益が損なわれてしまった事実を忘れてはならない。

 異様な円高株安に効果的な対策を打ち出せなかったのはもとより、国政全般に支障が出ている。尖閣諸島付近の漁船衝突事件では、中国に足元を見られ、深夜に大使が呼びつけられても「遺憾の意」を官房長官が示しただけだ。

 あまり知られていないが、資源獲得競争でも後れをとった。

 南米ボリビアには、エコカーなどに使われるリチウム電池に欠かせないリチウムが大量に埋蔵されている塩湖がある。この権益確保をめぐって日本、中国、韓国などがしのぎを削っているが、6月に予定されたボリビア大統領の訪日が延期された。鳩山氏が突然、首相を投げ出したためだが、大統領は先月、韓国を訪問し、経済協力の約束をとりつけた。日本は先手をとられてしまった。

 安倍晋三政権以降、毎年首相が交代することに象徴される不安定な政治状況が、日本の国力を確実に蝕(むしば)んでいる。今回の代表選で民主党員・サポーターの圧倒的多数が、小沢氏より菅首相を選んだ最大の理由は、菅人気というより、これ以上政治が混乱しては困るという切実な願いからだろう。

 同時に、小沢氏は宰相の器にあらず、と判断した党員も少なくないのではないか。「政治とカネ」の問題もさることながら、小沢氏の独断専行的体質、つまり非寛容さが嫌われたともいえる。

 20年以上も政界の主役を務めながら、古くからの同志・側近はほとんどいない。離合集散が永田町の習いとはいえ、ちょっとした感情のもつれから離れていった「元側近」のなんと多いことか。
 メディアの選別も露骨である。持ち上げるか本人にとって利用価値のあるメディアにはインタビューに応じるが、批判的な小紙などには、はなも引っかけない(当方は痛くもかゆくもないが)。

 「寛容と忍耐」を掲げ、高度経済成長を軌道に乗せた池田勇人氏のごとく、多様な国民の利害を調整せねばならない首相が第一に持つべき徳目は、寛容だ。厳しい時代だからこそ、非寛容なリーダーでは、この国は持たない。

 一方、世論に反して200人もの民主党国会議員が、小沢氏に投票したのも驚きである。「選挙で世話になったから」という新人も多いだろうが、「剛腕・小沢ならこの難局を打ち破ってくれる」という「小沢神話」の呪縛(じゅばく)から解けていない議員が多過ぎる。

 小沢グループの一部には「200票」を背景に、菅政権を揺さぶろうとする動きがあるが、愚かしいことだ。気に入らなければ党を出ればいい。これ以上の無駄な権力闘争はまっぴらご免蒙(こうむ)る

by momotaro-sakura | 2010-09-15 10:34