グローバル化維新

グローバル化維新
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 経済のグローバル化が進む中で、日本企業が苦戦している。縮小する国内市場には限界があり、中国に代表される新興市場を開拓しないと生き残れない。だが、サムソンに代表される韓国企業や、地歩を固めているグローバル企業との競争は厳しい。IT戦略を武器に、世界進出に挑む日本企業の実像と課題を探る。

第1回 世界制すコリアンパワー
 8月に発表されたトヨタ自動車の四半期決算(10年4~6月期)が、注目を集めた。2116億円の営業黒字。決算自体の良さよりも、話題になったのはその中身だ。もうかったのは、アジアにおける自動車販売と金融事業だった肝心の国内自動車販売は、エコカー減税に補助金という追い風があったのにもかかわらず、2四半期連続の赤字となってしまったのだ。同社が過去最高益を記録した08年、連結営業利益の半分以上を稼いでいた頃の見る影もない。

アジアで稼ぐ日本企業


BRICS諸国の中でも中国が販売ターゲットの中心に(ジェトロ「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」から) トヨタに限らない。各社の決算を見ると、日本企業を取り巻く市場の状況が見えてくる。スズキは営業利益のうち約7割をインドの連結子会社が稼ぎ出し(10年3月期連結決算)、ホンダのアジアの稼ぎは昨年同期から約4割増、国内の稼ぎに匹敵する全体の2割に達した(10年4~6月期)。自動車に限らず、電気機器、建機、生活用品、食品など、アジア全体の利益が日本や北米などを上回る輸出産業が増えている。

 これはある意味、当然だ。アジア市場はリーマン・ショックの嵐が吹き荒れる中でも高い経済成長率を維持し、今後も高い成長が見込まれている。国際通貨基金(IMF)は、2010年の中国のGDP成長率を10.5%、インドを9.4%と予想している。同じ予想で世界全体の成長率は4.2%、先進国全体は2.6%、日本は2.4%にすぎない。

 国内にとどまっている企業は、おのずと成長に限界がある。日本貿易振興機構(ジェトロ)の「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」によると、今後3年程度の間に「海外事業を拡大したい」と答えた企業は全体の56%に達した。売り上げ拡大を目指す具体的な国や地域を複数回答で聞いたところ、中国が55%と最多となった。これは2番目に多かった米国のほぼ倍。日本企業が生き残りや将来を語るとき、新興国市場は欠かせない存在となっている。

ユニ・チャームはアジアで19%の営業増益を見込み、TOTOは予想営業利益の約7割を中国で稼ぐ。日立製作所、東芝、パナソニックは海外売上高比率を50%以上に引き上げ、ユニクロを展開するファーストリテイリングは、中国の店舗数を1000店に拡大する。このほか、書ききれないほど多くの企業が中期計画や決算などの発表の席で新興国シフト、中国シフト、グローバル化を鮮明にしている。
中国の地方都市はサムソン、LGが席巻
「中国の地方都市で日本製品は売れていない」と中国市場戦略研究所の徐向東・代表取締役 新興国、なかでも中国への日本企業進出は、昨日今日始まった話ではない。過去数度の中国進出ブームがあり、成功した企業の影には、今も赤字を抱えている会社、そして撤退に追い込まれた会社もたくさんある。

 毎日のように新聞紙面を飾る日本企業の中国進出。中国市場戦略研究所の徐向東・代表取締役は「どれだけの会社が中国で成功できるのか」と、厳しい目で見つめている。徐さんの会社は中国に進出する日本企業向けにコンサルティングサービスを提供する。中国地方都市の視察から帰ってきた翌日、厳しい現状を聞いた。

 10年以上前から進出する日本企業は多いが、サムソン、P&G、ユニリーバのように大成功した会社はほとんどないという。「報道通りの結果を出したと思えるのは日産自動車くらいでは」。リーマンショック以降、国内の販売不振を理由に起きた中国進出ブーム。徐さんはその一部にも懐疑的だ。

今は『新興国市場に進出する』と言わないと株価も落ちてしまいますからね。本気でビジネスする気があるのか疑いたくなるような例がたくさんあります。株主や世間に対するエクスキューズ(言い訳)として進出を口にしているだけではないかと」

 徐さんは、中国・四川省の成都、重慶という2級都市と、徳陽、綿陽、楽山、眉山など人口100万~300万人の3~5級都市を回ってきたばかり。3~5級都市の写真を見直すと、北京・上海などの1級都市、2級都市と違いがわからない。地方都市の発展のスピードを改めて思い知った。



中国市場に攻勢を強めるサムスン電子。ソウル市内で展示された新型スマートフォン(2010年8月撮影)「日本企業の製品、サービスを見かけるのは1級都市が中心。3~5級都市ではほとんど見かけません。1級都市の消費は飽和状態に近いが、2級以下の都市は伸び盛り。店の棚に並ぶのは欧米系と中国の会社、そしてサムソン、LG電子といった韓国の会社の製品ばかり。日本製品は影も形もない。それが現状です。それらの製品は、インドやベトナム、インドネシア、そしてアフリカなどでも売れる力があります」 日本企業は、技術のイノベーション(革新)でリードしたが、ビジネスモデルで遅れをとった。「ビジネスモデルのイノベーションはほとんどなかったように思える。『ビジネスモデルのイノベーションでは、中国の方が勝っている分野もあるのでは』と、ある中国の経営者が中国のテレビで言っていた。日本企業が抱える課題のひとつを言い当てている」


グローバル化遅れに危機感…日本企業トップ


危機感を抱く日本のCEO(IBMのグローバルCEOスタディ2010ジャパンレポートから) 成長著しい新興国市場、特に中国に飛び込んだものの、成功している企業はごくわずか。韓国企業の後じんを拝している。しかし、成長市場を攻略できなければ企業の未来はない

 こんな現実を前に、日本企業のトップは現状をどうとらえ、そしてどのように行動しようと考えているのだろう。

 IBMが興味深い調査をしている。日本を含む世界60か国の主要企業の最高経営責任者(CEO)1541人に対して、足元の経営環境と今後の経営課題についてのインタビューを行い、その内容をまとめているのだ。特に日本企業と韓国企業の回答について全体の回答と比較し、日本企業、韓国企業の特徴をあぶり出している。

 この調査からは、日本企業のトップが「新興国が経済力をさらに増し、その結果、今以上にグローバル化を迫られること」を強く意識し、場合によっては危機感さえ抱いていることが見えてきた。次回、このアンケート「グローバルCEOスタディ2010ジャパンレポート」もう少ししく見ていこう。

南部 健司
フリー・ライター。技術系出版社でのパソコン誌記者を振り出しに、パソコン通信、ネットサービスの運営などにも携わる。パソコン、インターネットのビジネス利用を中心テーマに、パソコン誌、経済紙などに執筆。1965年生まれ。



http://www.yomiuri.co.jp/net/global/zoom/20101001p04.htm

by momotaro-sakura | 2010-10-01 10:52