実機を用いずに鉄道や自動車の組み込みソフトを開発する

2010年10月28日
日立ニュースリリースより


実機を用いずに鉄道や自動車の組み込みソフトを開発する
完全仮想化シミュレーション技術を開発
電子制御ユニットとハードウエアの双方を仮想化し高速インタフェースで連動

株式会社日立製作所(執行役社長 : 中西 宏明/以下、日立)は、鉄道や自動車などの電子制御ユニット(以下ECU : Electronic Control Unit)をあたかも実車に搭載したかのように試験を行うシミュレータであるHILS(Hardware - In - the - Loop - Simulation)において、エンジンやモータなどのハードウエアとECUの双方をモデル化し、すべてコンピュータ上で仮想化して評価・検証する技術を開発しました。従来のHILSは、ハードウエアをモデル化しリアルタイム演算で仮想的に実機と同等の動きをさせ、実物のECUの評価や検証を行うものです。今回、ECUについてもモデル化し、ECUモデルとハードウエアモデルとを高速通信インタフェースによって連動する技術を開発することによって、完全に仮想化された環境の中で、従来のHILSと遜色のない検証処理性能を実現しました。本技術を活用することによって、開発者はECUやエンジンの実機を用いることなく、机上で鉄道や自動車の組み込みソフトの開発・設計ができるようになります。

鉄道や自動車をはじめとする輸送機器の機能の高度化とともに、ECUに実装される組み込みソフトの規模はますます増大し、その開発コストの低減や開発期間の短縮が事業を左右する大きな課題になっています。HILSは、エンジンやモータをモデル化してコンピュータでリアルタイム演算を行い、仮想的に実際のメカニズムと同等の動きをさせることによって、ECUをあたかも実機に搭載したかのように試験できるシミュレータです。実機による試験に比べ、短期間かつ安全に極限状態で試験できるだけでなく、問題が発生したときの再現が容易にできるメリットがあることから、近年、鉄道、自動車、ロボット、プラントなど広い分野で応用されるようになってきました。もし、エンジンやモータなどのハードウエアに加えECUも仮想化できれば、ECUの試作やソフトの修正のすべてをコンピュータ上で処理できるので、従来のHILSよりさらに開発コストの低減や開発期間の短縮が期待されます。

このような背景のもと、今回、日立は、ECUとハードウエアをそれぞれモデル化し、HILSを用いた場合と等価なテストをすべてコンピュータ上で実現できる、仮想化したHILSの開発に着手しました。開発技術は以下の通りです。

1. 高速・高精度なモデル間の通信インタフェースの開発
現在の組込み制御システムは、ハードウエアを制御するECUを通信ネットワークにより複数相接続した大規模なシステムが主流です。こうした環境化においては、完全に仮想化したHILSを実現するには、組み込みソフトの検証対象となるECUと、それ以外の他のECU及びハードウエアを含む外部環境を、それぞれモデル化し連動させる必要があります。このために、モデル化したECUのデジタル信号と外部環境のデジタル信号との高速で高精度の通信インタフェースを実現する必要がありました。そこで、今回、組み込み制御システムで一般的に用いられているCAN(Controller Area Network)を用いて、組み込みソフトの正常動作に最低限必要な高い抽象度の通信を模擬することにより、精度を保ちつつシミュレーション実行の高速化が可能な通信モデルを開発しました。
2. 効果の実証
日立では、自動車の車間距離を保持するACC(Adaptive Cruise Control)システムに本技術を適用し、効果の検証を行いました。この結果、従来のHILSと比較して、同等の精度でありながら、シミュレーション実行速度を34%に高速化できることを確認しました。また、今回の技術を適用することにより、ECUとハードウエアの双方をモデル化しすべてコンピュータ上で実行できたため、検証環境の複製が容易となり、大量の検証項目を同時に並列実行させることができます。今回、3並列実行を行ったところ、従来のHILSと比較して、シミュレーション実行速度は102%となり、従来のHILS以上の検証処理性能を達成することを確認しました。 なお、本成果は、10月27~30日に韓国 高陽市で開催される国際会議「ICCAS2010 : International Conference on Control, Automation and Systems 2010」で発表する予定です。

by momotaro-sakura | 2010-10-28 12:34