隠れていた「危機の構図」

隠れていた「危機の構図」
編集委員 中山淳史公開日時2011/5/3 4:00

 エアコンなどを制御する半導体、エンジンの金型、赤色の塗料……。震災後、自動車の組み立て工場が止まった原因はこうした部品や素材が不足したためだった。

 とりわけ、「マイコン」と呼ばれる制御部品は深刻だった。トヨタ自動車などは当初、一日でも早く復旧させようと、被災した半導体大手、ルネサスエレクトロニクスの茨城県にある工場を共同で買い取ろうとまで考えたという。

 部品の在庫を極限まで減らす「ジャストインタイム」。それは効率的な経営を約束してくれる手法である一方、大災害が来るとアキレス腱(けん)にもなりうる可能性を秘めていた。

 だが、自動車や電機メーカーが、このやり方を捨てることは恐らくない。「有事の際に費用がかかっても、平時から部品在庫をたくさん持つより効率がいい」(トヨタ幹部)と、企業にはわかっているからだ。

 問題があったとしたら、取引先の様子が完全には把握しきれていなかった点ではないか。

 例えば、日立製作所と三菱電機とNECの半導体事業を再編してできたルネサスは、マイコンの世界シェアが3割にも達する巨大企業。だが、国内にある工場は統合前と同様、生産のやり方が異なったままで、工場が被災したら別の工場に振り向けられる体制になっていなかった。

 ルネサスは自動車メーカーからみたら、2次ないし3次の供給者だ。だから直接取引している部品メーカーの陰に隠れ、業界再編の不徹底が見えにくかった。これはまずい。ほかにも見えない問題が潜んでいるのではないかと、疑いの目も向けられてしまう。

 震災に原発事故が重なり、ただでさえ「日本の製造システムが機能不全に陥った」との悲観的な声が世界には出てきている。海外の製造業が日本抜きのサプライチェーンづくりに走れば、日本の競争力の源泉である部品業界の地位がアジアなどのメーカーに奪われかねない。経済復興の遅れだけでなく、中長期的に日本の成長力が衰えていく懸念を、何としても拭っておく必要がある。

(編集委員 中山淳史)
日経ニュース
by momotaro-sakura | 2011-05-06 13:20