社説:不信任決議案提出 やはり大義は見えない

毎日社説:
不信任決議案提出 やはり大義は見えない 

なお10万を超す避難者や、生活再建に取り組む人たちの目にこの攻防はどう映っているだろう。自民、公明など野党は1日、菅内閣に対する不信任決議案を提出した。

 衆院本会議で2日に行われる採決では民主党議員の大量造反が見込まれ、党の分裂含みで状況は緊迫している。東日本大震災の復旧のさなか、自民党はあえて倒閣へ勝負に出た。だが、納得するに足る大義名分が掲げられたとは言い難い

 なぜ今、不信任決議案なのか。谷垣禎一自民党総裁が「おやめになってはいかがか」と退陣を促し、菅直人首相が「復興、原発事故収束の責任を果たしたい」と拒んだ党首討論の応酬を聞いても疑問は解消できなかった。

 谷垣氏は政権発足以来の民主党の選挙での敗北、米軍普天間飛行場移設の停滞などを挙げ「人徳も力量もない」と首相の指導力を批判した。だが、大震災を経た国会のさなかで決議案を出すからには震災、原発事故対応で「なぜ首相ではだめなのか」、さらに「誰ならいいのか」を十分説明する責任があったはずだ。

 被災者支援の遅れなどはもっともな指摘だったが「建設的な意見をいただいた」と首相に逆手に取られた。原発事故の初動対応に問題が生じているのも事実だ。しかし、首相が谷垣氏に反問したように、自民党の従来の原子力政策や安全対策も問われている。 もちろん、この状況を招いた責任は民主党を掌握できない首相にもある。首相は討論で「通年国会」も含め国会の会期を大幅に延長し、2次補正予算案など震災対応に取り組む方針をようやく表明した。今国会でどこまで政権を懸けて復興に取り組む決意があるのか、谷垣氏が真に問うべきはこの点だ。

 内閣の命運を決する2日の採決で民主党議員の責任は野党以上に大きい。小沢一郎元代表の系列議員を中心に大量造反が予想されている。いろいろ理由はあろうが、本質は震災でいったん封印された内紛の蒸し返しである。不信任決議案への対応は政党人として極めて重い。野党の提案に同調するというのであれば最低限、離党の覚悟を固めるべきだ。

 不信任決議案が可決されても否決されても、もはや相当の混乱は避けられまい。可決の場合、被災地の事情を考えれば首相による衆院解散は難しい。一方で首相を退陣に追い込んだ場合の新政権の展望が谷垣氏から示されたわけでもない。
 否決されても民主党の分裂状況は政権の運営に大きな影響を与えることになろう。今、政治がなすべきことは何か。本会議場では議員一人一人が自問し採決にのぞんでほしい。
by momotaro-sakura | 2011-06-02 08:29