被災者そっちのけ 不信任案提出に避難所から怒りの声

被災者そっちのけ 不信任案提出に避難所から怒りの声
 菅内閣の不信任決議案が衆院に提出され、民主党が分裂含みの緊迫した局面を迎えた1日、東日本大震災の被災地では「被災者置き去りの権力争いだ」と国政への批判が渦巻いた。復興の最前線で陣頭指揮する被災地の首長たちは「政局の場合か」といら立ちをあらわにした。

◎首長、いら立つ/解散・総選挙、不安/政治力の力、使い方間違っている

 「怒りを感じる。政局はやめてほしいというのが被災地の声だ」
 気仙沼市の菅原茂市長は、厳しい口調で住民感情を代弁した。宮城県南三陸町の佐藤仁町長は「非常に不本意だ。国会議員の多くが被災地を見ているはずなのに、政局にかまけている場合か」と反発した。
 東松島市の阿部秀保市長は「復興のスピードが損なわれかねない」と政治空白を懸念。「誰かがおぼれていたら『誰が助けるか』ではなく『どうやって助けるか』が大事ではないのか」と現場不在の攻防を冷ややかに評した。
 2日の衆院本会議で不信任案が可決されれば、内閣総辞職か衆院解散・総選挙の事態になる。各市町長は「震災対策の2次補正予算や復興会議の議論が不透明になる」(菅原市長)、「投票所になる場所の多くが現在、避難所になっている。選挙実務を担う職員も足りない」(佐藤町長)との声が上がった。
 避難所で暮らす被災者はあきれ顔だ。
 「被災地は今も大変なのに、国会議員は一体何をやっているのか」と憤るのは、石巻市内の避難所で暮らす遠山邦男さん(66)。「政権交代すれば復興が早まるのか。福島の原発事故が収束するのか」とぶちまけた。
 気仙沼市の菅野十郎さん(73)は「(国会議員が)私たちの代表者なら、被災者を助けることが先だ。足の引っ張り合いはやめてほしい」と訴えた。大船渡市の平田民恵さん(73)も「政治家の仕事は復興に全力を挙げること。エネルギーの使い方を間違っている」と批判した。

◎対応遅れ懸念/宮城・福島県知事

 内閣不信任決議案が衆院に提出されたことに関し、村井嘉浩宮城県知事と佐藤雄平福島県知事は1日、国政の混乱で震災対応が遅れることに強い懸念を示した。
 村井知事は宮城県庁で取材に応じ「被災地は復旧・復興に待ったなしの状況だ。2次補正予算も直ちに編成してもらわないと困る。与野党協力し、被災地に目を向けて仕事してほしいと、ただただ願う」と話した。
 不信任案が可決された場合の衆院解散・総選挙については「制度上はあり得ても、被災地は物理的に不可能だ。だから県議選も延期されている」と指摘。「選挙すべきだという国会議員がいるなら女川、南三陸、気仙沼に足を運んで(現実を)見てほしい」と訴えた。
 佐藤知事は福島第1原発事故に関する緊急要望後、都内の民主党本部で取材に応じ「国として被災者をしっかりと受け止めてもらわなければならない。それだけだ。緊急事態だから、国会議員全体として超党派でやってくれると信じている」と激化する与野党攻防をけん制した。

◎「タイミング、本当に今だったか」/3県与野党困惑

 自民、公明両党などが内閣不信任決議案を衆院に提出した1日、東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島3県の与野党幹部は複雑な心境をのぞかせた。「菅内閣のままでは復興が遅れるだけだ」と不信任に賛同の声が上がる一方、「タイミングは本当に今だったのか」と困惑も広がった。
 自民党福島県連の斎藤健治幹事長は、福島第1原発事故への政府対応を批判し「不信任決議案の提出は当然」と指摘。「早く辞めてもらわないと復興が進まない。(政治空白は生じるが)急がば回れだ」と言い切った。
 同党宮城県連の須田善明幹事長は「政府の震災対応を見れば、一分一秒でも早く辞めてほしい」と語ったが、「なぜ被災地が復旧に向かうこの時期なのか」と戸惑いも。党本部に対しては「覚悟の行動でなければ被災者に理解されない。万が一、否決されれば党執行部は身の処し方を考えるべきだ」と注文を付けた。
 対する民主党。宮城県連幹部は「復旧・復興に全力投球すべき時に不信任案とは感覚を疑う。政治空白が許されるわけがない」と野党を批判。党内に広がる造反の動きには「同調者が出ること自体が考えられない。どこからそんな発想が出てくるのか」とけん制した。
 不信任案に賛成する意向を固めた小沢一郎元代表のお膝元、同党岩手県連の佐々木順一幹事長は「小沢氏がどう考え、行動するか注視するほかない」と語り、口をつぐんだ。


2011年06月02日木曜日

河北新報社典出
by momotaro-sakura | 2011-06-02 11:27