製茶からセシウム

製茶からセシウム

藁科の全工場で検査へ 他産地は規制値下回る
 静岡市葵区の藁科地区の本山茶から、国の暫定規制値(1キロ・グラム当たり500ベクレル)を超える放射性セシウムが検出された問題で、県は9日、藁科地区内の約100茶工場すべてで、製茶の放射能検査を実施することを決めた。10日から回収し、来週にも検査する。

 発表によると、東京都内の食品通販会社が6日、本山茶と清水茶(静岡市清水区の両河内地区)を自主検査し、500ベクレル超のセシウムを検出したと県に連絡。県が再検査し、本山茶で679ベクレル、清水茶で461ベクレルのセシウムを検出した。

 これとは別に県は同日、静岡市清水区など11産地で一番茶の製茶を検査し、すべてで規制値を下回ったと発表した。7日に発表した8産地と合わせ、県内全19産地で規制値を下回った。本山茶についても、藁科地区東隣りの美和地区で調べたが413ベクレルだった。

 生茶葉で県内最高の379ベクレルを検出し、規制値超えが懸念されていた伊豆(伊豆市)は、359ベクレルだった。県は「生茶葉を検査した茶園の製茶がなく、別の茶園で実施した。十分な理由は説明できない」と述べた。

■産地ごとの値(1キロ・グラム当たり)は次の通り。

 【本調査】伊豆茶359ベクレル▽北駿茶128ベクレル▽ぬまづ茶225ベクレル▽富士宮のお茶349ベクレル▽富士のお茶359ベクレル▽本山茶413ベクレル▽清水のお茶368ベクレル▽御前崎茶149ベクレル▽袋井茶141ベクレル▽遠州森の茶158ベクレル▽浜松茶265ベクレル

 【自主検査に基づく調査】本山茶(静岡市葵区藁科地区)679ベクレル▽清水のお茶(同市清水区両河内地区)461ベクレル

■生産者ら、戸惑いと反発

 県茶商工業協同組合の藤田文敏専務理事は「残念。県に協力して、規制値を超えた茶が流通しないよう迅速に対応したい」と唇をかんだ。藤田専務理事によると、規制値以下の段階で消費者からは「昨年の茶が欲しい」「贈答用に茶を使うのは控えたい」といった声があったという。それだけに「県内の他産地への影響が懸念される。混乱が起きないか心配だ」と、風評被害を心配する。

 JA静岡中央会(静岡市駿河区曲金)の松本早巳農政営農部長は「原因は福島第一原発の事故。農業関係者は出荷自粛をしてもしなくても、実害を被っている。東京電力などに補償を求めるかどうか、状況をみて対応したい」と、補償要求の可能性に踏み込んだ。

 生産者やメーカーなどからは戸惑いや、国への反発の声が上がった。

 本山茶を生産する静岡市葵区内牧の男性(73)は先日、「本山茶は大丈夫か」と客に尋ねられ、「福島から離れている。大丈夫」と答えたばかり。それだけに、規制値超えの事態に「ただただ驚いている」と言葉を詰まらせた。

 藁科地区の茶を扱う製茶メーカー「佐藤園」(静岡市葵区)は9日夕、客から「買った茶は大丈夫か」などの電話対応に追われた。50歳代の男性役員は「なぜ藁科地区だけ規制値を超えたのか」と、戸惑う。同社は製品を自主検査し、「規制値以下」の証明付きで出荷してきたが、出費覚悟で再検査を決めたという。「この地区には製茶工場も農家もたくさんあるので、藁科地区とひとくくりにされても困る」と、きめ細かな対応を求めた。

 また、静岡市の茶商は「国は、飲用茶や食用茶など、消費者が口にする段階での規制値を決めてほしい。製茶は規制値を超えたが、飲用茶は安全だと訴えたい」と語った。
   

(2011年6月10日 読売新聞)
by momotaro-sakura | 2011-06-10 06:02