再狭窄防ぐ新ステント登場

再狭窄防ぐ新ステント登場
血管内に溶け出す薬剤
急速に普及しそう

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  「再狭窄(きょうさく)はほとんどなし」―。狭心症や心筋梗塞(こうそく)の際、カテーテル(細い管)を使った治療で利用される新しい「薬剤溶出ステント」が、日本でも使えるようになった。
 ステントは金属製の網状のチューブで、狭くなったり詰まったりした心臓の血管(冠状動脈)を広げた後に置いて血流を確保する。従来の治療は一度広げた所が再び詰まる再狭窄が多かった。新ステントは再狭窄を防ぐ効果が非常に高く、急速に広まりそうだ。
 
 ▽既に700人に
 「本当に遅かった。アジアだけを見ても、このステントを使えなかったのは日本を含め3つの国だけだった」と千葉西総合病院(千葉県松戸市)の三角和雄(みすみ・かずお)院長・心臓センター長。
 同病院では5月から既に約700人の患者に新ステントを使ったという。
 再狭窄は、血管が押し広げられたり、ステントを入れたことによって傷ついた部分が、傷を修復しようとして細胞が増殖するために起こる。
 今回、使用が認められたのは「サイファーステント」と呼ばれ、ステンレス製で表面に免疫抑制剤の一種であるシロリムスが塗られ、一定期間、薬剤が表面から溶け出して細胞の増殖を防ぐ仕組みになっている。
 「再狭窄はステントを入れた後、3-6カ月後に多い。従来、再狭窄は15-25%あったが、新ステントはほぼゼロ。現在、3カ月を過ぎている患者は300人強で、再狭窄率は0・8%。100人に1人もいない」(同院長)
 米国での再狭窄率データも0-5%。再狭窄はほとんどなくなったと言えるという。

 ▽1泊2日
 「現在、カテーテルの挿入はほとんど手首の血管から。カテーテルの先に付いたバルーン(風船)で心臓の血管を広げ、ステントを入れるのにも30分以内。局所麻酔だけでよい。手首は止血も簡単で1泊して翌日帰宅している。土曜日に入れて日曜に帰宅、月曜は普段通り出勤というパターンが多い」と三角院長。
 5月に同病院で、日本初のサイファーステントを入れた70歳の女性の場合、重症の狭心症で三本の冠状動脈が全部詰まりかけていた。
 高齢で手術もできない状態で、2月の入院時には心機能が低下し、ショック状態だった。カテーテルを使い、従来のステントを2つ入れた。3カ月後に再狭窄が見られ、ちょうどサイファーステントが使えるようになったため、その内側を含め4カ所に入れた。現在は元気に歩き回っているという。

 ▽ロータブレーター

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 これまでは、詰まった冠動脈を自分の体の血管を使って置き換えるバイパス手術が行われてきたが、全身麻酔で胸を開いて行う手術のため、体への負担が大きかった。
 「バイパス手術とカテーテルの割合は欧米で1対1、日本では1対3から4だったが、今は1対7か8。もう10人中9人がカテーテルという時代になるのではないか。普通3本の冠動脈のうち1―2本が詰まっている場合、カテーテルですべてできる」(同院長)
 また透析患者や高血圧が長い人などは冠動脈が石灰化しやすく、血管内部が石のように硬くなって、バルーンやバイパス手術もあきらめているケースが多かった。
 そういう場合、カテーテルにダイヤモンドドリルが付いた「ロータブレーター」を装着して石灰化部分を削った後、ステントを入れることも1時間程度でできるという。
 三角院長は「ロータブレーターはまだ限られた所でしかできないが、当院では昨年だけで500件以上を実施し、世界一の実績がある。ステントは入れて半年持てば、後はまず再狭窄することはない」と話している。
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薬剤溶出型ステントによる冠動脈疾患の治療
新世代のステントには、血管に機械的支持を与えるだけでなく、血管が再び閉塞するのを防ぐ働きをする薬剤が塗布されているものがあります。薬剤溶出型ステントを血管に留置すると、数週間にわたって、薬剤が直接血管壁に溶出されます。

再狭窄リスクの低減
この薬剤には、ステント留置後、再狭窄を抑制する働きがあります。

血栓のリスク
薬剤溶出型ステントは、血管を開存させておくのにはベアメタルステントよりも効果的ですが、別のリスクを伴うこともあります。一部の研究では、薬剤溶出型ステントを留置した場合、ベアメタルステントを留置した場合よりも、留置したステント内に血栓(血のかたまり)が形成されるリスクが高い可能性があることが示唆されています。薬剤溶出型ステントは比較的新しいため、長期的な成績はありません。

血栓症はまれですが、血栓ができると命取りになる可能性があります。このため、薬剤溶出型ステントを留置した場合は、血栓予防薬(抗血小板剤)を服用する必要があります。どのくらいの期間服用するかは担当医師の指示に従ってください。

冠動脈疾患がある患者さんのすべてに、薬剤溶出型ステントが適しているわけではありません。あなたがこの治療法に適しているか否かについては、担当医師がアドバイスしてくれます

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8.最新のステント治療術について
新東京病院・循環器科部長  中村 淳
 皆さんこんにちは。新東京病院循環器科の中村淳です。

 今回は“心臓病”、とくにその中でも私たちが出合うことの多い疾患である“狭心症、心筋梗塞症”についての話をします。両疾患ともに心臓を養う血管(冠動脈といいます)が動脈硬化などの理由で内腔が狭小化して狭窄、もしくは閉塞により起こるものです。現在世界的レベルでも、この疾患が統計上死因の第1位となっており、私たちが皆さんを守るため、最も闘っている敵といえるものです。

 今回はいくつかの項目に分けて最新の治療までの説明を簡単にしてみたいと思います。

血管が狭くなっている状態
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狭いところにカテーテルが入っている状態
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カテーテルのバルンが膨らんだ状態でステントが入っている
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カテーテルを抜いて血管が広がり、ステントにより固定された状態
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1 狭心症と心筋梗塞症の違いは?(図をみてください)

 冠動脈が動脈硬化などの理由で内腔にその硬化巣が突出してくると、いわゆる“狭窄”をつくるわけで、これがその先の心臓を栄養するのに“足りない”状況が発生したとき、これを“狭心症”といいます。

 また、この後にその硬化巣の狭窄が進行し、なんらかの理由(たとえば冠動脈の攣縮)が加わって破綻して血栓(血の塊)がつき、急速に完全に閉塞した状態を急性心筋梗塞症とし、とても死亡率の高い病変となってしまいます。よって、早めに予防治療することが大切です。

2 治療はどうする?(図をみてください)
 基本的には、①内科治療(薬物治療)(これは治すということにはならないことが多いですが)、②カテーテル治療(図)、③心臓外科による冠動脈バイパス術の3つがあり、患者さんの病態により適切な治療が新東京病院でも選択されます。

 一般的には②、③の比率は欧米に比べて日本ではカテーテル治療の比重が高く、カテーテル治療対バイパス術は6対1または7対1になっています。結局現在ある冠動脈の狭窄そのものを解除することを“全身麻酔なしで開胸なしで”施行するのが、カテーテル治療で(図)、その冠動脈の狭窄より先のほうに手術的に他の血管を用いて栄養させてあげるのがバイパス術になります。

3 カテーテル治療とバイパスはどう選択するか?
 医療はあくまで患者さんのものですから、短期的、長期的に患者さんに得になるほうを選択するわけですが、現在両方ともに技術的にはかなり進歩したので、短期的には100%近くまでうまくいくようになりました。

 そもそもバイパス手術というのは一度うまくいくと(とくに新東京病院心臓血管外科のようにうまく手術をしてもらうと)“再狭窄・再閉塞”ということはほとんどないのですが、カテーテル治療は6カ月以内に20~30%の再狭窄率があり、これがアキレス腱でした。すなわちカテーテル治療は常に“再狭窄”というリスクを背負ってやってきた治療だったわけです。

 ただし、この治療後の再狭窄という病態は一般的には重篤なものではなく、心配されることはありません。病変的にもカテーテル治療の中では難易度の低いものであるわけですが、冠動脈の部位によっては再狭窄がおきてほしくない部位があり、そのときにバイパス手術が選択されてきたわけです。

4 新しいステント治療とは・・・
   薬剤溶出性ステント(Drug-Eluting Stent=DES)
 現在カテーテル治療の中で最も進んだものがこの薬剤溶出性ステント(DES)です。すなわち、これはこれまでに述べた再狭窄がほとんどないステントで、画期的なものです。これによって、かなり冠動脈バイパス手術が減少していくのではと考えられています。

 初期のカテーテル治療だけ成功すれば、その部位は半永久的に悪くなることがないという時代になったということで、患者さんにとってはかなりの福音であると思います。しかしながら、現在でもカテーテル治療をするには難しすぎてできない場合もあり、これから先は今までとは別のバランスで心臓外科の先生達とのコラボレーションを考え、当院心臓血管外科山口部長ととも皆様の健康を守っていきたいと考えています。

DESと医療費について
山 中 鈴 美 
 薬剤溶出性ステント(以下DES)は会報誌32号にて、仙台の横山初江さんが国内初の治療を受けたことでその内容を「免疫抑制剤を塗布し、コーティング剤のポリ乳酸で覆ったステントを冠動脈内に埋め込む。免疫抑制剤は血管内へ少しずつ染み出し、内膜組織の増殖を長期的に抑制、ポリ乳酸は約1カ月で体内に吸収される。術後の再発率は3%程度になると期待されている」と紹介しました。そのDESが今年8月に保険適応になったことで、多くの患者さんの治療を有効にしていくことになります。 カテーテル検査と治療費用(カテーテル1本での計算です)
カテーテルの種類 3割負担 老人1割
カテーテル検査のみ 約7万円 40,200円
ステント 約27~30万円 40,200円
サイファ(新ステント) 約30~32万円 40,200円
ロータブレータ・PTCA 約30~32万円 40,200円
ローラブレータ・ステント 約32~38万円 40,200円
ロータブレータ・サイファ 約40万円前後 40,200円
※手法などで金額が若干違います。目安としてください
新東京病院医事課提供


 今回、使用が認められたステントはステンレスの上に免疫抑制剤のシロリムスを塗り、一定期間、薬剤が表面に残るようになっており、通常のステントと比べ劇的に再狭窄を減らすとされています。バイパス手術を終えた方にとってどんなときに使うかと言いますと、バイパスが適応になった時点では、大きな狭窄が数カ所にわたり発生していたり、左主幹部の太い血管に心筋梗塞がある場合でした。この場合にカテーテル治療では新たな心筋梗塞の発生など治療中に生命の危険を伴うことが多いとされ外科的に治療を受けたわけです。

 しかし、いったんバイパスで全体の血流が改善された後に新たに、狭心症や心筋梗塞になった場合はその場所に今回の治療が有効になるといえます。バイパス手術時に10年は大丈夫と言われ、10年を経過した方はそろそろ大丈夫なのか? と心配されているかと思いますが、今回の治療でまた安心を得られるのではないかと思われます。

 DESの治療で課題となっていることは、治療後の抗凝固療法です。血管内に異物であるステントを入れると、血液中の血小板が集まり血栓を作り、新たな心筋梗塞を引き起こす可能性があり、血液の塊をできにくくするために抗血小板剤を使います。この抗血小板剤にクロピドグレルという薬が有効とされていますが日本ではまだ承認されておらずDESの治療においては、抗凝固療法を慎重に検討されるべきであるとの注意もあります(クロピドグレルは海外では販売されているが日本では承認に向けて治験段階の薬剤)。

 次にステント治療の医療費についてですが今回はカテーテル全般についても記しておきますのでご参考になさってください。金額は表のとおりです。老人医療の負担は2割では正確には出ませんので、医事課にお尋ねください。東京都の重度心身受給者証を使用の方は治療費での窓口負担はありません。高額医療費の貸し付け制度や委任払いなどの方法もありますので、医事課または医療相談室までお尋ねください。

(2004. 10月、SHINSHIN Report 第38号より)


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1)カテーテル治療には緊急治療と待機的治療とがあります。緊急治療は急性心筋梗塞などで緊急に救命の必要があるときに行われます。この場合は準備が不十分でも手元の間に合わせの風船カテーテルを用いて治療します。待機的治療の場合は、検査カテーテルで特定された病変に見合った風船カテーテルを準備し、必要によってはステントという支えも用意して治療にのぞみます。検査カテーテルと風船カテーテルとは異なります。
万全の態勢で行う待機的治療の場合は検査カテーテルを用いるカテーテル検査と風船カテーテルを用いるカテーテル治療とは別々に行うのが通例です。

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1)ステントの耐用期間
日本では1994年から保険適応のもと、冠動脈ステントが使用されています。ステントの安全期間についてですが、ステンレスは一般的には腐食しないといわれており、今の所そういう報告もありません。

2)ステント挿入後の造影検査

一般的に、冠動脈ステント挿入後は、症状がなくても6ヶ月後に冠動脈造影を行ないステント挿入部の評価をしています。症状があれば、そのときに評価します。問題がなければ、その後は定期的な検査はいらないと思います。ただし、他の部位の動脈硬化が進む可能性があり、3~5年後には冠動脈造影を受けられることをお奨めします。

なぜ6ヶ月後かというと、その頃までがステントの内の内膜増殖が一番強い時期で、血管が一番細くなるといわれているからで、以後はふたたび広がる可能性があるからです。

3)ステント挿入後の一般的注意

最近では狭心症や心筋梗塞の患者さんにはステントを使用したカテーテル治療が一般的に行われています。ステントはステンレスなどの金属で作られた医療器具で、風船で拡張した冠動脈の狭窄部位に留置してより確実に血管を内腔から保持することでカテーテル治療の治療効果を上げています。すでに全世界で10年間以上の治療経過があり、長期の安全性も確立されていますが、いくつかの注意事項があります。
1)留置後1週間以内にステント内の血栓閉塞のため、心臓発作が再発することがあります。この亜急性冠閉塞は多い合併症ではなく、全体の0.1%程度の頻度で発生します。通常、アスピリンとパナルジンの二剤の抗血小板薬が処方されますが、忘れずにきちんと内服するようにしてください。
2)退院後は内服薬の副作用モニターも含めてはじめの1ヶ月は2週間毎に外来通院し、血液検査と治療効果確認のための問診や心電図検査を行います。パナルジンではまれに肝機能障害、無顆粒球症の出現が見られます。強い倦怠感、黄疸、出血傾向や易感染性などがある場合はすぐに主治医に相談してください。
3)留置後1ヶ月以後は安定期に入りますが、再狭窄のために半年後くらいたってから狭心症が再発することがあります。再狭窄のない場合では、治療した血管はその後に問題を起こすことは極めてまれです。
4) MRIなどの検査を行うことは問題ありません。
5)現在虚血性心臓病のカテーテル治療としてステント留置は全体の70%程度行われています。よい適応で使用すれば安全かつ確実な治療法であり、これまでに長期的な問題として明かな有害事象は報告されていません(ステントが血管の中で錆びたり、折れたりすることはありません)。

虎の門病院循環器センター内科医長 石綿清雄ほか

付記)ステンレスのステントの場合は、3か月経って、固定されるまではMRI検査は控えた方がよいとされています。

4)DESステントについて

(1)DESとは薬剤溶出性ステント(drug-eluting stent)をいいます。再狭窄を防止する薬剤をステントに塗布して、ここからゆっくりと薬剤を溶出させるというわけです。薬剤としては、抗生物質であるシロリムス(サイファー・ステント)や抗癌薬であるパクリタキセル(タキサス・ステント)などがありますが、本邦ではサイファー・ステントが認可され、用いられています。これらの薬剤溶出性ステントでは再狭窄率は5分の1ないし10分の1に低下します。反面、価格が通常の30万円から42万円と1.5倍になります。

(2)現在薬物溶出性ステントは、サイファーとタキサスの2種類と2009年5月より使用可能となったエンデバーステントを含めた3種類が使用可能です。使い分けは術者により多少異なりますが、基本的には、ステントの形、長さ、薬の特性、在庫の有無に加えて、患者様の病態、挿入する血管の大きさ、蛇行の具合、動脈硬化の性質や程度などの様々な要因を加味したうえでどのステントが適切であるかを判断しています。同一の患者様に異なった種類のステントを使用することも、適切と判断すればあり得ます。時にはサイファー・ステントの再狭窄の部位にタキサス・ステントを挿入する場合やその逆もあります。これも比較的どこの施設でも行われていると思います。

2009年6月26日追加更新
by momotaro-sakura | 2011-06-11 13:07 | 健康管理/先端医療