日産、日立…それぞれの「人材開国」

日経ニュース

日産、日立…それぞれの「人材開国」
新しい日本へ
 第5部 「震災後」へ動く(3)番外編

公開日時(1/3ページ) 2011/6/29 4:00

 「新しい日本へ」の28日付紙面では、震災後に懸念が強まる国内空洞化を防ぐために日本企業が新興国など成長市場に打って出る必要があることを指摘した。そこで欠かせないのは人材のグローバル化。国内社員が語学…font>



Business & Economic Review 2010年12月号【特集 成長戦略とグローバル化】
成長戦略としての「人材開国」政策
2010年11月25日 山田久


要約

1.国内労働力が減少に向かい、海外事業の重要度が飛躍的に高まる今後の日本経済・日本企業の持続的成長にとって、「人材開国」により優秀な外国人の力を取り込むことは不可欠の課題であり、成長戦略の最重要テーマの一つに位置付けられる。本稿では、わが国の人材グローバル化が遅れている要因を分析したうえで、成長戦略としての「人材開国」政策の在り方を考える。

2.2008年の世界経済危機を経て、「まず自国があって海外事業をどう展開するか」という発想に基づいたものから、「グローバル市場から着想し、そのなかで自国をどう位置付けるか」という発想への転換が求められている。しかし、日本企業にとっての海外現地法人は、「出先機関」として位置付けられている面がなお色濃く残存しているのが実情である。これは日本国内の人材グローバル化の遅れに原因があり、国内本社がグローバルに通用する業務手順やルールの構築に取り組み、外国人に本社経営陣登用への途を開くことが問題解決に必要となる。日本企業が「内なる国際化」に取り組むことで、国内優先のドメスティック企業から、内外一体で捉えるグローバル企業として自己認識を変えることが求められている。

3.現行のわが国における外国人受入れの方針は、専門的・技術的労働者は可能な限り受け入れる一方、それ以外のいわゆる単純労働者については慎重に対処するというものである。しかし、現実には専門的・技術的労働者の受入れは余り進まず、むしろ単純労働者が大幅に増加したのが実態である。高度外国人の受入れの遅れは、入国管理制度上の問題よりも、①国内本社グローバル化の遅れ、②大学国際化の遅れ、③外国人を受け入れる都市環境整備の遅れ、といった点に起因するものと考えられる。

4.今後の環境変化の潮流からすれば、日本経済・日本企業のマクロ・ミクロ両面での人材グローバル化は不可避の課題である。もっとも、日本人にとって国際化(異文化との接触)の経験量の絶対的な不足という現実を踏まえれば、表層的・急進的な取り組みはかえって反動を生むリスクがあり、持続的かつ地に足のついた「人材開国」を進めることが肝要といえる。まずは従業員の海外派遣の積極化、海外留学経験のある若者の増員等により、グローバル化を「体験」する日本人を増やすことから始める必要がある。同時に「国内本社人材のグローバル化」「大学の国際化」「外国人に魅力ある都市づくり」により、本社・大学・都市の三つの場における内外人材交流を推進することが、人材開国政策の要諦である。

5.近年、企業活動のグローバル化が進展するに伴い、世界各地に分散した事業を統合する高度な本社機能が不可欠になり、それを支える金融サービスやプロフェッショナルな事業所サービスが集積した「グローバルシティー」が成長している。この背景には、国民経済という経済単位が衰退し、地域単位でのグローバル化の度合いが当該地域住民の生活水準を決めるようになるという、「グローバルな地域間競争」の構図が生まれているとの事情がある。そうした新たな構図のもと、今後、グローバルシティーをいくつ作れるかが国の成長力を決める重要ファクターになるといっても過言ではない。その意味で、本社・大学・都市における内外人材交流の推進は、グローバルシティー建設につながるものである点で、成長戦略の中核に位置付けられるべき施策といえる。
日本総研



人材開国を考える――50年後を見据えて「外国人政策」を (2008/11/23)


 外国人労働者受け入れが加速したのは一九九〇年代初めだった。途上国の人材育成に貢献することを目指した研修・技能実習制度が本格的に動きだし、一方でブラジルなどの日系人についてはほぼ無制限で受け入れる制度が始まった。

 その結果、増え続けていた不法就労・不法滞在は徐々に下火になってきた。だが、これまでも繰り返し指摘してきたように、現行の制度も様々な問題をはらんでいる。

ほぼ20年ぶりの大改革

 一つは研修・技能実習制度が単純労働力を低賃金で受け入れる裏道として利用されていることだ。「途上国の人材育成」という制度の理念と実際に制度を利用する企業などのニーズがかけ離れているのである。

 結果として、多くの研修・技能実習生が実態は労働者なのに労働者として当然の法的な保護を受けられない状況に陥っている。最低賃金を下回る給与しか払わなかったり、パスポートを押収したりする人権侵害や法令違反が各地で頻発している。

 政府は、二〇〇九年に出入国管理法などの改正案を提出することを目指して改革案の検討を進めている。ほぼ二十年ぶりの大改革となる。ただ、厚生労働省や経済産業省がたたき台として示してきた案をみる限り、雇用者への監督強化や違反に対する罰則強化など、小手先の改革案にとどまっている印象が強い。

 厚労省や経産省の案のように「単純労働力は受け入れない」という建前を前提にして考えると抜本改革の展望は開けない。「人手不足を外国人労働者で補う必要がある」と正直に認めたうえで、新たな受け入れ制度を考えるべきだ。多くの国が採用しているような、期間三年程度の就労ビサ(入国査証)を発給する短期就労制度は参考になるはずだ。

 日系人の増加で問題となっているのは外国人を受け入れる環境・基盤の不備である。たとえば、日本語教育のシステムやカリキュラムを国として整える努力を怠ってきた。また、転居する際に市町村へ転出・転入届を出すことを外国人には義務づけていないため、自治体は外国人の居住実態を把握するのが難しい。

 こうしたインフラの不備は、帰国した中国残留孤児などにとっても大問題だ。総合的・体系的に取り組むことが不可欠で、省庁縦割り的な対応では限界がある。

 日本経済団体連合会は十月に発表した提言の中で、外国からの人材受け入れを担当する閣僚の設置と関係省庁が一体となって取り組む体制の整備を訴えている。

 経団連の提言は長期的な観点から「日本型移民政策」の検討も求めている。根底にあるのは、今後五十年間で人口が四千万人近く減り特に生産年齢人口はほぼ半減する見通しであることへの強い危機感だ。

 さらに、消費や住宅投資などの内需の縮小も加わって経済は活力を失い、膨大な負債を抱えた財政や年金は維持しにくくなる。医療・介護や教育、治安・防災といった経済社会インフラが揺らぐ……。
 提言が展望する五十年後の日本の姿はかなり悲惨であり、日本の経済社会の活力を維持するため相当規模の移民を受け入れるべきだとの議論にはそれなりに説得力がある。

 自民党の外国人材交流議員連盟が六月にまとめた提言はさらに踏み込んで「今後五十年で一千万人の移民を受け入れよう」と訴えた。

足元の課題を踏まえて
 一方、日本経済調査協議会が九月に出した提言は、外国人労働力を大量に受け入れた欧州諸国で社会問題が発生しているのを踏まえ、移民の受け入れには慎重だ。工場労働者など高度ではない働き手は単身赴任とし、能力開発の程度に応じて一―五年で帰国してもらうのを基本とする。そのなかで特に能力を高めた人は「高度人材」と認定して定住を前提にした就労を認める――といったアイデアを示している。

 言うまでもなく、人口減・労働人口減対策としてまず必要なのは少子化を食い止め出産を増やすための努力や女性の社会進出の応援である。現状程度の外国人の受け入れでさえ問題が頻発しているのが実情で、大規模な外国人の受け入れや定住を前提とした移民の本格的な受け入れは社会に深刻な摩擦をもたらしかねない。慎重な議論が求められる。

 とはいえ、日本語教育などの体制整備や外国人向けの住民台帳制度の創設など、足元の課題に対応していくことは今後、多くの外国人材に頼らざるを得なくなったときのためのインフラを整えることにもなる。

 どの程度の規模の外国人労働者をどのような形で受け入れるのか。五十年後を見据えた「外国人政策」を包括的に検討するときである。
2008/11/23, 日本経済新聞
by momotaro-sakura | 2011-06-29 11:06