一体改革案決定 ここは自民の出番だ=編集委員・吉田啓志


一体改革案決定 ここは自民の出番だ=編集委員・吉田啓志
 消費税率10%への引き上げは、10年代半ばまでに--。政府の社会保障改革検討本部の煮え切らない税と社会保障一体改革最終案は、与党内の反発を制御できず、重要事項を決められない民主党政権の限界を再びさらけ出した。負担増の必要性について、今後同党だけで国民を説得できるとはとても思えない。ここは自民党の出番だと考える。

 毎年1兆円ずつ増える社会保障費に、892兆円におよぶ国・地方の長期債務。この先も増税が不要と本気で考える国会議員は与野党問わず少数派だろう。

 なのに現政権は選挙への影響を恐れ、言葉遊びに終始した。「税と社会保障」と呼んでいたのを、増税色を薄めるために「社会保障と税」へと言い換え、政権幹部が「絶対譲らない」と口をそろえていた「15年度までの増税」も、土壇場で「10年代半ば」とぼかした。

 菅直人首相は政権維持の材料にならないと判断するや、みるみる熱意を失った。揚げ句には政府・与党の方針としながら、与党内の反発をかわすために閣議決定は先送り。もはや政権党の体をなしていない。

 こうした民主党を横目に、自民党の石破茂政調会長は「与野党協議の前提は閣議決定だ」と語る。与党内が割れたままでは「誰を相手に話していいのか分からない」と。懸念は分からなくはない。

 が、自民党には「民主党に増税させた後、政権を取ればいい」と考える議員も多い。だから民主党には「自民党から『増税を決めたのは民主党』と言われる」と警戒し、増税は与野党で合意後に閣議決定すべきだと言う議員が少なくない。互いに税率アップの必要性は認識しながら、自分の手は汚したくないとけん制しあうばかりでは永遠に負担増に踏み込めず、財政破綻を招く。民主党はもちろん、昨年の参院選で「10%」を掲げた自民党も歩み寄るしかない。

 一体改革案には、長期療養者の負担軽減や低所得者への基礎年金加算など民主党の主張が数多く反映されている。しかし、財源の裏付けのない政策は絵に描いた餅に過ぎない。反増税派が言う「無駄の削減」は不断の実行を要するものの、それで捻出できるお金と今後必要な財源はケタが違う。与野党を超え、政治家は「痛み」の必要性を説くことから逃げてはいけない。

毎日新聞 2011年7月1日 東京朝刊
by momotaro-sakura | 2011-07-01 08:27