一体改革案、玉虫色の決着で財政健全化に懸念

再送:一体改革案、玉虫色の決着で財政健全化に懸念2011年7月1日6時45分
 [東京 30日 ロイター] 「参院選で菅直人首相が消費税増税を打ち出して1年ごしの宿題に答が出せた。政権与党として消費税増税を決断した意味は大きい」──。民主党幹部は社会保障・税一体改革で社会保障充実のための消費税増税を打ち出した決断に胸を張った。しかし、消費税引き上げ時期などの玉虫色の決着で、政府が掲げる財政健全化目標達成の道筋は明確にできず、市場では格下げのリスクが残るとの懸念の声が出ている。

 政府・与党は30日、社会保障・税一体改革について「2010年代半ばまでに段階的に消費税率を10%まで引き上げる」ことを決定した。しかし、「2015年度までに10%」とした当初の政府案からは後退し、民主党提案の「2010年代半ばごろまでにおおむね10%」との折衷案で、時期について明言することができなかった。

 政府は2015年度までに基礎的財政赤字の対GDP比半減と2020年度の黒字化を財政健全化目標に掲げ、日本政府の財政再建への取り組みの証として国際会議でも繰り返し訴えてきた。半ば国際公約となった財政健全化目標の達成メドがつかなくなれば、日本の格下げにもつながりかねないとの危機感が、政府が「2015年度」明記にこだわった背景。内閣府試算では、当初の政府案のシナリオで半減目標は達成できるとしていた。

 会見で与謝野馨経済財政・社会保障税一体改革担当相は、「2010年代半ば」の解釈として、玄葉光一郎政調会長(国家戦略担当相)は2014年度から2016年度をまとめた表現と説明したと解説し、2015年度の時限は盛り込めなかったが、5%の増税幅と15年度前後の時期を明記できたことで、財政再建への「懸念は無用」と語った。

 しかし、民主党の増税反対派の勢いに押されがちだった最終盤には、政府内からは「2015年度の時限が消えれば、市場に財政健全化目標断念と映りかねない」(政府筋)との危機感も聞こえるなど、決定プロセスでは2013年度から2015年度までの2段階引き上げへの民主党内の抵抗の強さが露わになった。玉虫色の決着は「2010年代半ばまでは、2010年代半ばから後半の意味だ」(民主党議員)との解釈にもつながり、2015年度の財政健全化目標達成が遠のいた感は否めない。

 退陣の「めど」を表明しつつ、執行部との確執を抱えた菅政権をめぐる混乱が、今回の議論に大きく影響を及ぼしたことも否めない。「15年度まで」に強行な反対姿勢を示した民主党の一部議員が展開した主張は「増税よりデフレ脱却が先」。だが、一体改革に関わる経済官庁のある幹部は、その言葉を文字通り受け取らなかった。「今後の選挙や菅首相退陣後の身の振り方までにらみつつ議論している向きが少なくない。最後はどこまで政府にねじこめるか、ただの条件闘争的チキンレースになってしまった」とあきれ顔だ。

 市場からは政府の財政再建スタンスに懸念の声が複数聞かれ、日本国債格下げの可能性が指摘された。RBS証券チーフエコノミストの西岡純子氏は「2010年代半ばという表記は工程表として成り立っておらず、財政再建にはネガティブな印象を与えかねない。政府はプライマリーバランスについて2020年度に黒字化させる目標を掲げているが、その成否の可能性は確実に低下した」と指摘。

 インベストラスト代表取締役・福永博之氏も「消費税増税時期が当初よりあいまいになっており評価できない。マーケットでは景気を腰折れさせる懸念があるため現時点の消費税増税に反対する声が多いが、将来にわたっての明確な財政再建のロードマップが示されることを期待していた」とあいまいさを指摘、「国債格下げの可能性は消えていない」と見通した。

 すでにムーディーズ、S&P、フィッチなどの格付け会社は日本国債の見通しを「ネガティブ」もしくは「引き下げ方向で見直し」としている。5月31日に日本国債の格付けを引き下げ方向で見直すと発表したムーディーズは今月27日、効果的な財政改革の包括プランがなければ日本政府の債務負担は今後10年でより重くのしかかってくるとし、民主党内紛による政策不透明化で長期の財政再建プランに遅れが出る場合は格付けにマイナス要因になる、としている。

(ロイターニュース 吉川裕子 基太村真司 取材協力 伊賀大記、山口貴也 編集:石田仁志)

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by momotaro-sakura | 2011-07-01 08:32