在宅人工呼吸器患者:命の危機、節電の夏に恐々

在宅人工呼吸器患者:命の危機、節電の夏に恐々
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小俣貢さんの母の枕元に並ぶ人工呼吸器や、たん吸引機。部屋には人工呼吸器のシューという音が響く=川崎市幸区で、久野華代撮影 東京電力福島第1原発事故の影響で1日から始まった電力使用制限令を受け、人工呼吸器を使いながら在宅治療を続ける患者や家族が停電に恐々としている。人工呼吸器が止まれば命に関わる一方、体温調節の必要から節電に積極的に協力できない事情もある。患者の家族からは「普段の介護でも気を張り詰めているのに停電の心配が加わり、追い詰められそうだ」と訴える。

 枕元の人工呼吸器やたん吸引機から、何本ものコードが絡まりながらコンセントに延びる。酸素発生器に近寄ると放出される熱を感じる。川崎市幸区の小俣貢さん(52)は、重症肺炎を患って人工呼吸器を24時間装着する母(78)を、3年ほど前から自宅で看病している。人工呼吸器の内部バッテリーとメーカーから借りた外部バッテリーで停電に備えるが、計4時間しかもたない。充電が切れたら手動で酸素を送るアンビューバッグを押し続けるしかない。手を止めたら母は死んでしまうかもしれない。

 3月の計画停電ではバッテリーがもってくれた。東電は5月、今夏の計画停電の「原則不実施」を発表したが、緊急時は別だ。停電時に暗闇の中で人工呼吸器とバッテリーをうまくつなぎ換えることができるだろうか。小俣さんは「少しの時間でも母を苦しませたくない」と話す。

 東電は家庭にも15%の節電を呼びかけている。だが部屋には人工呼吸器やたん吸引機などの電動機器が並び、エアコンを使わなければ室内温度が上昇し母が熱中症を起こす恐れがある。6月からエアコンをつけて28度程度に保っているが、電気の重要性が身にしみるからこそ、政府や東電の節電呼びかけに応えられないのが心苦しい。せめて他の部屋は明かりもエアコンもつけないようにしている。

 日本呼吸器学会によると、気管切開とマスク式を合わせ、在宅で人工呼吸器を使う患者は全国で少なくとも3000人以上いるという。在宅医療患者の家は優先的に停電させない方法を確立してほしいと小俣さんは願う。だが東電は、医療機関を計画停電から除外しているが、個人宅については「数が多く(停電させないための)遠隔操作も技術的に難しい」として否定的だ。

 厚生労働省も「個別の家庭への対応は難しいので、発電設備のある医療機関などに避難してもらうしかない」と話す。東電は、発電機を貸し出しているが、小俣さんは「音も大きく、ガソリンのにおいも強い。住宅地では使いにくい」と話す。

 同省は停電に備え、バッテリーが切れた場合の緊急入院を国立病院機構などに要請している。また患者の節電については「人工呼吸器を止めるわけにはいかないので、特に求めてはいない」と話している。【久野華代】

毎日新聞 2011年7月6日 2時30分
by momotaro-sakura | 2011-07-06 09:11