働きやすい企業ランキング

働きやすい企業ランキング―
―人気だけではわからない、CSRデータで分析!
 トップは日立製作所、資生堂、帝人(1)
- 10/04/12 | 07:05
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 先日掲載したCSR企業ランキングは1104社から回答があった東洋経済CSR企業調査(2009年7月実施)をベースにしている。この中で雇用や人材活用に関するデータは、通常、企業が出したがらない情報が満載だ。

 これらのデータを使って作成した雇用得点は「働きやすい企業」を選ぶための情報として役立つ可能性が高い。そこで、今回はこの得点を使った「働きやすい企業ランキング」をご紹介する。

 ランキングに使用したデータは24項目(詳細は記事末に掲載)。制度の有無や達成度などを得点化した。CSR企業ランキングでは対象外となっている金融機関、未上場企業も含んでいる。

 では、ランキングを見てみよう。トップは日立製作所、資生堂、帝人が100点で並んだ。いずれもCSR企業ランキングで10位から16位と上位にランクインしている。これら3社に共通するのが多彩な人材活用制度だ。





■働きやすい企業ランキング 上位100社/詳細解説はこちら(「投資お役立ちランキング」欄に掲載しています)

 例えば、日立は社内公募制度を91年に導入。現在はグループ19社が対象で、この制度を使って2000年以降、450人が社内異動した。

 子育て・介護支援も充実している。小学校卒業までの時短勤務に加え、在宅勤務も可能。介護は必要な期間中、何年でも短時間勤務できるなど恵まれた制度が数多くある。

 資生堂も負けていない。もともと女性社員が多く、事業所内保育所などの育児支援制度は充実している。近年は男性の育児休暇取得者も増加中で、男女に関わらず子育てをしながら働くことが普通になっている。
女性管理職比率は18.7%(連結ベース)と大手企業ではトップクラス。数年後には30%まで上げることを目標として掲げる。さらに、障害者雇用率は2.88%(09年6月時点)と他社を大きく上回る。

 同社は、「人は1のものを2にも3にも変えることのできる最も大切な、そして唯一心を持つ経営資源」と考える。「社員の成長と会社の成長が重なる会社を目指す」という基本方針のもと、社内公募・FA制度など各自の能力を最大限に活かすための各種制度を整備している。

 帝人は「社員とともに成長します」という企業理念のもと、「生産性の向上」と「社員の人生の豊かさ」向上を目指す。

 最長1年間の介護休暇や育児・介護を対象にした週2回までの在宅勤務など子育て・介護支援制度は日立や資生堂と比べてそん色ない。さらに特筆すべきなのが配偶者の転勤にあわせて転居先の近くの事業所への異動を配慮する「夫婦帯同転勤制度」。優秀な人材ができるだけ辞めなくてすむように、会社としてできる限りの支援策を講じている。

 能力開発については、「成長の源泉は自らにある」とし、OJTをベースに各個人が成長することをめざす。社内公募や社内FA制度だけでなく、社員が新ビジネスを提案できる企業内ベンチャー制度もある。「高い目標に果敢に取り組むことこそが、能力向上につながる」という同社の人材育成方針を体現している制度といえるだろう。

 このトップ3社に続くのが、4位NEC、オリックス(得点98.1点)、6位日本郵船、東芝、髙島屋、東京海上ホールディングス(同94.3点)などだ。

 さて、こうした働きやすい環境を企業が整備することをCSR(企業の社会的責任)活動ととらえるのは間違いだ。あくまで企業の最大の目的は利益をあげること。それを長期間、持続し続けるためには従業員の力が欠かせない。

働きやすい企業には優秀な人が集まる。そして、人の力により、さらに強い企業にするという好循環に持っていく必要がある。優れた企業ほど「企業発展のために不可欠な優秀な人材を集めるために、働きやすい制度が必要」という認識を持つ。

 その一方で、充実した制度が競争力アップにつながらないケースもある。典型例が会社更生手続き中の10位、日本航空(JAL)だ。同社は学生の就職人気企業ランキングなどで上位の常連だった。確かに各種制度の充実度はすばらしく得点だけ見ると非常に高いが、企業は存続することができなかった。

 社員にとって短時間勤務や充実した福利厚生、高い給料などの恵まれた環境はありがたい。だが、これを当然の権利と考え、ぬるま湯に浸かってしまうと企業は成長しなくなる。一人ひとりが努力し、伸びていかないと企業の競争力はどんどん落ちていく。

 各企業は充実した制度を各社の競争力アップにつなげていくことが求められる。優れた制度だけでなく、結果も出ているか。本当に働きやすい企業を選ぶためには、このランキング以外にCSR企業ランキングや財務ランキングなどをあわせて見ていくことも必要だろう。

(岸本吉浩 =東洋経済 財務・企業評価チーム)
by momotaro-sakura | 2011-07-07 10:09