シャープの大型液晶パネル事業は2011年度に赤字転落

 「ロス・シェアリング(損失分担)の観点から単価は従来の半分で注文書を書かせて頂けないでしょうか」。
4月中旬、大阪市内のシャープ本社で経営幹部が切り出した。積み上がった在庫を減らすため4月初めからテレビ用液晶パネルの生産を中断、
大幅な収益悪化が不可避の状況だった。

 「昨年末にも同じことを言われたばかりなのに」。集まった液晶部材事業者は不満を募らせながらも、数社が一定の値引きに応じた。
それでもパネル単価の下落や円高が響き、シャープの大型液晶パネル事業は2011年度に赤字転落する見通しだ。

■営業益3分の1に
 液晶事業全体の営業利益は、携帯端末に使う中小型液晶の好調に支えられ320億円と前期比9割近く増える。
それでも4年前に比べれば約3分の1。パネル生産中断に伴う損失約260億円は特別損失扱いのため実態はさらに厳しい。

 液晶テレビの先駆者であるシャープがここまで追い込まれたのは、09年10月に稼働を始めた堺工場(堺市)の誤算が大きい。
世界シェアで韓国、台湾勢との差が広がりつつあった07年、一気に差を詰めようと当初想定で3800億円の投資を決めたのが堺工場だ。


 だが、その後4年余りで円は対ドルで3割強上昇。投資の時期や規模、場所はいずれも裏目に出た。
価格競争力が低下しソニーや東芝といった大口顧客は離れていった。土地を確保済みの2期工事が実施される可能性はゼロに近い。

 「韓国サムスン電子が安値でのパネル供給を増やしている」(テレビメーカー幹部)。
液晶パネルの平均価格はこの1年で3割前後下落した。サムスンが「価格破壊」のリード役になっているのはほぼ確実だ。

 サムスンも液晶事業では11年1~3月期から2期連続で150億円以上の部門赤字に陥った。
だが、液晶パネル用ガラス基板を作る米コーニングとの合弁会社は10年度に連結営業利益3兆5800億ウォン(約2600億円)を計上した。
パネルが不採算でもその部材で稼ぐ構図だ。
 事業規模と収益構造の両面で強みを持つサムスンは、
「ライバルを撤退に追い込み残存者利益を得る、半導体と同じパターンを狙っているのではないか」と国内勢は危機感を強める。

■亀山は中小型に
 「環境変化に対応するため、二つの切り口で構造改革に取り組む」。シャープの片山幹雄社長は6月、生産体制の再編を表明した。
2つある大型液晶用の工場のうち、亀山工場(三重県亀山市)は大部分を中小型用に転換。収益性は大幅に改善する見通しだ。

 問題はもう一つの工場、堺工場だ。世界最大のガラス基板からパネルを作れる強みを生かすため、
60型以上の超大型パネルの生産構成比引き上げを目指すという。
ただ、超大型テレビや電子看板市場が拡大しなければ再び戦略見直しを余儀なくされる。

 大型液晶を巡る苦境はパナソニックも同じ。10年に兵庫県姫路市で稼働した新工場などが業績の重しとなり、
パネル生産を含むテレビ事業は10年度まで3期連続の赤字。
今期もテレビの世界販売は2割増の2500万台を見込むが赤字の見込みで「数を作っても利益が出ないことがはっきりした」(大坪文雄社長)。

 東芝、日立製作所、ソニーの3社が統合する中小型液晶の世界シェアは20%強とシャープを抜き1位となる。 テレビの轍(てつ)を踏まない戦略が問われる。

by momotaro-sakura | 2011-09-05 07:38