クリーン技術で石炭火力が「悪役」返上 先端走る日本勢に勝機

日経ニュース
クリーン技術で石炭火力が「悪役」返上 先端走る日本勢に勝機
公開日時 2011/11/21 7:00

 地球温暖化の元凶の1つとされてきた石炭火力発電が、東京電力福島第1原子力発電所の事故後、代替エネルギーとして見直されている。タービンやボイラーなどの中核機器で米ゼネラル・エレクトリック(GE)など海外勢が高い世界シェアを握る一方、大気汚染物質の排出を抑制する環境装置では日本メーカーの技術が先端を走っている。

 日本政府が福島原発事故を受け今秋に見直しを始めたエネルギー戦略。その中間整理で、火力発電の二酸化炭素(CO2)削減技術と高効率化は、再生可能エネルギーと省エネ技術、原発と並び重要項目に位置付けられた。この動きは海外でも広がり、エネルギー需要が急増する中国やインドなど新興国を中心にクリーンな石炭火力への注目が高まっている。

 中国・長江デルタ経済圏の中心都市の1つ、杭州市。来春、火力発電所が排出する窒素酸化物(NOx)の除去に使う日立製作所製の脱硝触媒装置が稼働する。日立はこれまで日本から輸出していたが、中国の火力発電需要の増加をにらみ現地で調達から製造、販売までを一貫して手掛ける体制づくりを急いでいる。




日立製作所が2009年春に米セミノール発電所に納入した脱硝装置(米フロリダ州)
 実は脱硝装置の世界シェアは日立が26%(2010年度)で世界首位。強みは装置の独自構造にある


 その仕組みはこうだ。排ガス中のNOxを、アンモニアと触媒を使って無害な窒素と水蒸気に分解する。日立の装置は、排ガスに含まれるダストが堆積しにくい板状の構造にしたのが特徴。圧力損失が低く、排ガスを流すためのファンの動力を低減できる。子会社のバブコック日立が独自開発したもので、米国やドイツなどで受注実績がある。

 中国は11年からの5カ年計画で環境規制強化を掲げ、特に火力発電所から排出されるNOX削減に本格的に取り組み始めた。中国は埋蔵量の多い石炭への依存度が高く、発電量に占める火力比率は約8割。NOx削減は喫緊の課題だ。

 米国でも14年以降に火力発電所を対象にした環境規制が大幅に強化される見通しで、同国内の電力会社から脱硝装置に関する問い合わせが増えているという。脱硝触媒の市場規模が10年時点の約4万立方メートル(設置容量)から15年には15万立方メートルに拡大するとの試算もある。

日立は中長期の収益源と位置付ける電力インフラ事業の海外展開を加速しており、中国と米国は最重要市場だ。タービンなど中核機器を生産する日立事業所(茨城県日立市)の藤谷康男所長は「脱硝装置など環境技術が受注拡大の鍵を握る」と話す。




日立は石炭火力のクリーン技術を武器に電力インフラ事業を拡大する(日立事業所のタービン生産ライン)
 石炭火力が「悪役」扱いされてきたのは、化石燃料の大量消費を前提していることも一因だ。地球温暖化や資源枯渇の観点で問題がある。

 そこで登場する技術の一つが、石炭を無駄なく使う次世代の石炭火力発電「石炭ガス化複合発電(IGCC)」だ。この分野でも日本勢が先行している。

 IGCCはまず、石炭を細かく砕いて燃やした後、ガス化炉に入れて燃焼ガスをつくる。最初にガスタービンを回し、そこで出る高温の排ガスを使って蒸気をつくり蒸気タービンを回す。

 2つのタービンを回すので、最新の石炭火力に比べても発電効率を2割高められる。国内の電力会社が出資するクリーンコールパワー研究所(福島県いわき市)が商用化に向けた実験を進めるほか、三菱重工業は中国で事業化調査に乗り出す。日本や中国などでは、老朽化した石炭火力発電所を更新する際にIGCC活用を検討している。

 いままで利用できなかった低品位炭を燃料として使う技術の開発も進む。

 発熱量の小さい褐炭と亜歴青炭は低品位炭と呼ばれ、世界の石炭埋蔵量の約半分を占める。将来のエネルギー不足懸念のなかで低品位炭を使うのは有望な発電手段だったが、国内では原発に隠れて新設計画がほとんどなかった。福島原発事故で再注目されたのに加え、褐炭の埋蔵量の多い中国やインドネシアなどで燃料としての需要が高まっている。


日立は中長期の収益源と位置付ける電力インフラ事業の海外展開を加速しており、中国と米国は最重要市場だ。タービンなど中核機器を生産する日立事業所(茨城県日立市)の藤谷康男所長は「脱硝装置など環境技術が受注拡大の鍵を握る」と話す。









世界の石炭火力発電の導入見通し
(単位:100万キロワット) 国・地域 2007年 導入量 2030年導入見通し  
中国 502 1275
北米 354 393
インド 78 364
EU(欧州連合) 200 158
ASEAN(東南アジア諸国連合) 28 119
ロシア 52 73
アフリカ 41 68
日本 44 41
南米 6 2
by momotaro-sakura | 2011-11-22 11:42