【消費増税法成立】社会保障の肉付けを急げ

【消費増税法成立】社会保障の肉付けを急げ
2012年08月11日07時59分高知新聞
 消費税増税を柱とする社会保障と税の一体改革関連法が成立した。
 野田首相が政治生命を懸けるとした増税は実現するが、それに見合う社会保障の充実策は多くが先送りされている。一体改革の名にふさわしい中身とするために、検討作業を急がなければならない。
 現在5%の消費税率は2014年4月に8%、15年10月に10%に2段階で引き上げられる。国民には重い負担がのしかかるが、現状のような将来世代へのつけ回しがいつまでも続けられないのは確かだ。
 消費税には低所得者ほど負担が増す「逆進性」がある。5%と10%時点を比べた試算によると、年収に占める負担増の割合は年収1千万円の2・9%に対し、年収300万円では3・6%になるという。
 緩和策として、税率8%時点から低所得者に現金を支給することが盛り込まれている。ただし、支給範囲や金額の検討はこれからだ。不十分な内容にとどまれば、重税感の軽減につながらない可能性がある。
 それ以降の低所得者対策はまだ決まっていないが、2案が浮上している。減税と現金支給を組み合わせた「給付付き税額控除」と、食料品などへの軽減税率導入だ。世論調査では軽減税率を求める人が圧倒的に多い。
 どちらを採用するにせよ、それぞれに課題がある。できるだけ早く方向を決め、準備を進めていくことが欠かせない。
 逆進性による不公平感を和らげるため、当初の政府案には所得税の最高税率引き上げや、相続税の富裕層への課税強化が盛り込まれていた。だが、民主、自民、公明の3党合意では削除され、継続協議となった。
 そうした結果、消費税増税だけが突出した格好となった。しかも、社会保障をめぐる多くの課題が先送りされ、国民の安心につながる持続可能な将来像はほとんど描けていない。
 増税先行のままでは
 関連法によって進む社会保障制度の改革は3党合意に基づいている。無年金者を減らすための受給資格期間の大幅短縮や、厚生、共済両年金の一元化など、持ち越されてきた課題の解決に向けて前進した部分もある。
 一方で、民主党がマニフェスト(政権公約)で掲げた最低保障年金を柱とする新年金制度の創設や、後期高齢者医療制度の廃止は結論を先送りした。新たに設ける「国民会議」であらためて論議することになっている。
 政府、民主党は3党協議で大枠を固めた上で、有識者で構成する国民会議につなげる考えのようだ。だが、関連法成立を受けて自民、公明両党は野田政権への攻勢を強めるとみられ、協議を始められる環境には程遠い。
 協議入りが遅れれば、社会保障の全体像の提示はさらに先延ばしとなる。多くの国民が抱いている「増税先行」のイメージがより強まり、国民の不信も高まるだろう。
 社会保障のような国民生活に直結する制度はたとえ政権交代があっても、根幹が大きく揺らぐことのない安定性が欠かせない。その観点でいえば、3党合意に基づく制度改革は重要な一歩となるはずだ。
 国民を置き去りにした党利党略によって、国会が再び機能不全に陥ることは避けなければならない。一体改革に値する、社会保障の肉付けを急ぐよう強く求める。




●解説「年金一元化」

 自営業者らの国民年金、会社員らの厚生年金、公務員らの共済年金を、一元化して統合すること。

 厚生年金、共済年金は、ともに掛け金は労使の折半になっている。

 共済年金は、国家公務員、地方公務員、私立学校教職員の3つがある。

 日本の年金は、受給者が現役時代に支払った保険料が貯蓄され、将来の給付に回されるわけではない。現役世代が支払う保険料が、そのままその時点の高齢者に支払う年金財源になる。

 厚生年金は現在、現役3人が1人の高齢者を支えている。少子高齢化がこのまま進行すると、いずれは3人に1人が年金受給者となり、2人の現役が1人の高齢者の生活を支えることになる。現行制度では、現役世代の負担が重くなりすぎ、年金制度の破綻は目に見えている。

 国家公務員共済年金は、2人以下の現役が1人の高齢者を支えており、すでに破綻状態といわれる。

 また、国民年金は未納者が40%と、制度自体、崩壊寸前といわれている。

 年金一元化は、国民年金を実効あるものに立て直し、厚生年金と共済年金も統合して少子高齢化時代にマッチした制度に改める狙いがある。

 しかし、実際はすでに破綻状態にある共済年金を、厚生年金にくっつけて、救済する意図がある。

 国家公務員共済年金は、保険料だけでまかなえないため、2001年ですでに5000億円超の税金がつぎ込まれている。それなのに、厚生年金よりも給付が高く、厚生年金よりも受給者に有利な制度が多く残っている。このため、会社員らが支払った厚生年金の財源で共済年金を救済することへの反発がある。

 また、社会保険庁や厚生労働省などの行政官庁が、年金財源をほしいままに費消し、客足がないのは分かりきっている辺鄙な土地に豪華な保養施設を造ったり、天下りの受け皿として意味のない特殊法人を林立させたりして、年金財源を吸い上げてきた歴史がある。官僚はこうしたデタラメな行政への反省や責任追及のないまま、何事もなかったかのように、年金支給額を大幅に減らす年金一元化の施策を検討している。

 年金一元化に当たって、公務員の共済年金の優遇制度をどうするかという官民格差の問題が焦点になっている。

 官民格差の第一は、公務員共済年金は、だれでも20年以上勤務すれば一律に20%の職域加算がもらえる点。これは、厚生年金とほぼ同じ保険料率の掛け金で、公務員は20%増の年金額が受け取れるということ。この職域加算分を差し引いた実際の保険料率は、厚生年金が14.288%に対し、国家公務員共済年金は13.5%、地方公務員共済年金は12.7%と、共済年金が断然有利になっている。

 第二は「追加費用」が税金でまかなわれている点。これは、恩給から共済保険への制度移行時にすでに公務員だった人はそれまでの保険料を当然積み立てていないが、積み立て不足分の年金は「追加費用」として全額税金から補填されるというものだ。追加費用の総額は、1997年度が2兆1953億円でピーク。2004年度でも1兆7383億円と、共済年金総収入の4分の1に相当する。

 第三は、遺族年金の受給対象が広い「転給制度」が公務員共済にだけ認められている点。年金受給者が亡くなった場合、その遺族は遺族年金を支給されるが、厚生年金が配偶者と子供に受給資格が限定されているのに対して、共済年金は、配偶者と子供▽父母▽孫▽祖父母の順番に、最も上位の遺族が受給対象になる。加えて、遺族年金の受給者が亡くなると、受給資格が次の順位の遺族に移る。

 政府・与党は06年4月、2018年に厚生年金と共済年金の保険料を統一する年金改革の基本方針を発表した。公務員の受給年金を最大1割削減する。18年以降、新たに加入する会社員と公務員の保険料と給付額は同一水準になるが、それ以前の加入者の「官民格差」は、ある程度残る。「追加費用」の削減額は、必要予想額17兆円に対して、わずか1兆円にとどまる。20%の職域加算は2010年の新規加入者から廃止するものの、それまでの加入者には続けられる。「転給制度」は廃止の方向だ。

 いずれにせよ、破綻状態にある国家公務員共済を、厚生年金が救済する構図なのに、新制度の中に公務員の優遇制度がしっかり残ることになる。会社員よりも優遇された公務員の年金を救うために、民間の会社員は厚生年金の保険料引き上げ、受給額減額を強いられることへの反発が根強い。




年金一元化法案を閣議決定 公務員優遇の是正先送り

 野田内閣は13日、会社員の厚生年金と公務員の共済年金を一元化する法案を閣議決定した。税・社会保障一体改革の柱の一つで、官民格差の是正を掲げたが、公務員優遇と指摘される共済年金独自の上乗せ給付(職域加算)の扱いを先送りするなど、「官」への配慮がにじむ内容だ。

 法案では、2015年10月に「共済年金」の名称をなくし、「厚生年金」に統一。現在は厚生年金より低い共済年金の保険料率も、公務員は18年、私学教職員は27年に18.3%で厚生年金とそろえる。配偶者と子どもの死後も父母や孫が遺族年金をもらえる共済年金独自の「転給制度」は一元化に合わせて廃止する。

 ただ、将来の給付にあてる積立金は形の上では統合するが、各共済から移る積立金は半分程度にとどまり、運用も別々のままとする。また、恩給時代の名残で公務員の年金にだけ投入されている税金の削減は1割程度にとどまる見通し。

 一元化論議で焦点だった職域加算については、公務員労組やその支援を受ける与党議員に配慮し、「新たな公務員制度としての年金給付制度を設ける」と明記。具体的な内容は、政府が近く設ける有識者会議で議論される。
朝日新聞




厚生年金と共済年金の相違点
  厚生年金 共済年金
国家公務員 地方公務員
加入者数 3249万人 109万人 311万人
受給権者数 1117万人 63万人 155万人
現在の保険料率 14.288% 14.638% 13.738%
実質保険料率
(職域加算分を除外) 14.288% 13.5% 12.7%
職域加算 無 有 有
追加費用 無 4918億円 1兆2465億円
標準的な年金額 23万3000円 27万8000円 29万4000円
積立金(時価) 138.2兆 8.9兆 38.8兆
所管官庁 厚生労働省 財務省 総務省
※厚生労働省などの資料に基づき、
  年金額を除いて数字は2005年3月末現在
by momotaro-sakura | 2012-08-11 10:09