大震災から1年半私たちは今 

東京新聞【茨城】

大震災から1年半私たちは今 
<1>真壁地区の酒蔵

2012年9月12日


 江戸時代からの町並みが残り、国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建地区)に指定される桜川市の真壁地区。震災で瓦が崩れ落ち、土壁にひびが入り、落ち着いた「蔵の町」の景観は一変した。国の登録有形文化財などの建築物も数多く、改修作業は「在来工法」が原則。左官や瓦などの職人不足もあって、復興への道のりは、まだまだ遠い。
 真壁地区のほぼ中央に位置する江戸時代から続く老舗の酒蔵「村井醸造」。広大な敷地内には、仕込み蔵や製品蔵、しょうゆ蔵など十件の文化財が並ぶ。明治初期からの建物も多く、土壁、板塀、大谷石造りの蔵は、大半が崩れ落ちた。
 十七代目蔵主の村井重司さん(68)は「震災は仕込み作業もほぼ終わっていた時期で、酒造りにはあまり影響がなかったのが幸いだったが、建物は大きなダメージを受けた」と振り返る。
 震災では建物だけでなく、仕込みを終えたタンクが傾き、瓶なども多くが割れた。八十年の歴史を誇り、酒蔵のシンボルだった高さ二十メートルの煙突の一部も破損した。
 震災後初の酒造りとなった昨秋、仕込み蔵では雨漏りを防ぐため、壊れた屋根を何重にもビニールシートで覆った。ごみが混入しないように細心の注意を注いだ。人材不足が深刻な杜氏(とうじ)も新しく迎え入れることができた。
 十二月、初代から続く銘柄「公明」の新酒が出来上がった。江戸時代からの自慢の辛口。代々受け継がれた伝統が途切れることなく、酒蔵を守ったことに、ほっとした思いだったという。
 被害を受けた建物の周りには今、足場が組まれ、屋根の上からは、瓦職人たちがせわしなく歩く足音が聞こえてくるようになった。ただ、改修工事を発注するのは、市教委で、村井さんたちの思い通りには進まない、歯がゆさもある。
 「少しずつでも、元の真壁に戻っていっている。その姿をこれまで支えてくれた人に見てもらいたい」。村井さんは、そんな願いを込め、今秋、酒蔵の敷地を会場に、ジャズコンサートを計画している。 (原田拓哉)
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 東日本大震災から一年半。今も県民生活に震災や津波、東京電力福島第一原発事故が影を落とす。復興作業に追われる一方、原発事故の風評被害や補償の壁に直面する人たち。それぞれの現場での声を随時、伝える。
 <桜川市真壁地区> 町並みを後世に残そうと、2010年、17.6ヘクタールが国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された。江戸時代の陣屋を中心に、東西に延びる4本の通りによって町が形成される。国の登録有形文化財104件が地区内にある。市教委によると、震災により文化財は全体の8割程度が被害を受けた。11年度から5カ年計画で改修作業がスタート。総額10億円程度が見込まれる。市教委では「職人不足があり、作業はやっと始まった段階」と話す。

by momotaro-sakura | 2012-09-12 15:05