東京工業大学学術国際情報センター、都心部の気流を1mの解像度でシミュレーション

コンバーティング業界唯一のサイト CTIWEBより
http://www.ctiweb.co.jp/the-news/2941-1m10km.html

【シミュレーション】東京工業大学学術国際情報センター、都心部の気流を1mの解像度でシミュレーション。スパコンを駆使し、10km四方の計算に成功

2012年 10月 11日(木曜日) 08:39

 東京工業大学学術国際情報センター(GSIC)の青木尊之教授と小野寺直幸特任助教らは、東京都心部の10km四方のエリアに対し、実際の建造物のデータをもとに1m間隔の格子解像度で詳細な気流をシミュレーションすることに成功した。都市部は高層ビルが密集した複雑な構造をしており、気流(風)はすぐに乱流と呼ばれる状態になる。これを予測するには、1m間隔の格子を用いて広範囲に計算する必要があり、東京工業大学のスパコンTSUBAME2.0(用語1)の殆ど全てのGPU(用語2)4,000個を用いることでシミュレーションすることに成功した。1m間隔という細かい格子を用いてこれだけ広範囲の気流計算を行った例は世界でも報告されていない。
 これにより高層ビル背後の発達した渦によるビル風や幹線道路に沿って流れる「風の道」、台風の際の被害などが桁違いの精度で予測できるようになる。さらに、排ガス、事故やテロによる有毒ガスなどの汚染物質の拡散も詳細に予測できるようになり、国民生活の安全・安心にも直接的に貢献できる
 計算方法は大規模計算に適している格子ボルツマン法(用語3)を用い、発達する乱流を計算するために広域的な平均操作を行わないラージエディ・シミュレーション(用語4)のモデルを導入。詳細には、1mの格子間隔で水平方向に10,240×10,080格子、鉛直方向に512格子を用い、計算領域を4,032 に分割して4,032個のGPUで計算している。シミュレーションのプログラムはGPUでの計算用に高度にチューニングされており、4,032個のGPUを用いて600テラフロップス(単精度計算)の実行性能が得られた。また、GPUの消費電力が少ないため、このシミュレーションは電力効率が1W当たり545ギガフロップスであり、少ない電力(エネルギー)で目的の計算結果を得ることができた。

用語1 TSUBAME
 Tokyo-tech Supercomputer and UBiquitously Accessible Mass-storage Environment。初代TSUBAME1 は2006年4月~2010年10 月の期間稼働し、一年半にわたってアジア一位のスパコンとなるなど多くの成果を達成。2010年11月に、GPUを4,264台とCPUを2,952台搭載したハイブリッド型のスパコンとして、ピーク性能2.4ペタフロップスを持つ我が国初のペタフロップス・スパコンTSUBAME2.0に引き継がれ、Top500ランキングで世界4位になっている。
用語2 GPU
 Graphics Processing Unitはパソコンのビデオボードなどに搭載される描画(グラフィクス)専用プロセッサ。近年、多岐にわたる描画性能の要求に合わせてアーキテクチャが進化し、描画以外の汎用的な計算が可能になってきた。チップ上に数100以上の小型プロセッサを搭載し、超並列計算を行うことにより、同数のCPUと比べると非常に高い性能が得られる。TSUBAMEが2008年10月に世界で初めて680個のGPUをスパコンに搭載して以降、世界中のスパコンにGPU の導入が始まっている。
用語3 格子ボルツマン法
 一般的には空間3次元と時間を独立変数とするナヴィエ・ストークス方程式を解いて流体計算を行うことが多いが、格子ボルツマン法はさらに速度空間も独立変数とする、より第一原理的なボルツマン方程式を近似的に解く数値計算手法。速度空間の自由度を極端に制限し、比較的単純なアルゴリズムで計算することができ、大規模計算での採用が急激に増えている。等間隔格子で気流シミュレーションを行う場合などでは、格子ボルツマン法の方がナヴィエ・ストークス方程式を解く計算より、短時間でシミュレーションを行うことができる。
用語4 ラージエディ・シミュレーション
 流れが乱流になった場合、流れの特徴である渦構造は大きい渦から小さい渦まで分布する。その小さい渦まで解像する計算をすると現在のスパコンの数百万倍の演算性能が必要となるような非現実的な格子数で計算しないと十分な結果が得られない。ラージエディ・シミュレーションは計算格子で表現できる範囲の渦を方程式に基づいて計算し、格子より細かい渦に対してはモデルを導入する。激しい(高いレイノルズ数の)乱流に対して最も精度よく計算できると言われており、スマゴリンスキー・モデルが最も広く使われている。しかし、モデル定数を決定するために、動的スマゴリンスキーでは広範囲の空間平均操作を必要とし、これが大規模計算では大きな障壁となる。本シミュレーションでは、慶應大学の小林宏充教授の開発した平均操作を行わないコヒーレント構造スマゴリンスキー・モデルを格子ボルツマン法に適用することに成功し、大規模なラージエディ・シミュレーションに道が開けた。



最終更新 2012年 10月 11日(木曜日) 08:59
by momotaro-sakura | 2012-10-11 10:15