池上彰、そうだったのか!安倍新政権

朝日芸能ネット

池上彰、そうだったのか!安倍新政権(1)「夏に給料があがる!?」
2012年12月27日


大震災後初の総選挙は、民主崩壊、自民の地滑り圧勝となった。その要因の一つに、長引くデフレ不況に疲弊した国民が、大胆な金融緩和で景気浮揚を図る「アベノミクス」に一縷の望みを求めたことがあげられる。政権交代で日本は再び日いづる国となれるのか? 選挙特番でも大活躍だった池上彰氏がスッキリ解説する!

──総選挙では自民党が大勝し、再び政権交代を実現しました。

 そうでしたねぇ。ただ、実際には比例区の自民党の得票総数は3年前に民主党が政権交代した時よりも少ないんです。つまり、前回、民主党に1票を投じた人たちが今回の選挙では棄権しているんです。だから、民主党が勝手に負けてくれただけで、自民党が勝ったわけではないんです。

──現職大臣クラスの大物が落選し、民主党の大敗を象徴しました。

 はい、そのとおりです。ベテラン議員が次々に引退に追い込まれる一方で、経験の少ない“安倍チルドレン”が大量に生まれました。前回の民主党でどっと増えた「小沢チルドレン」現象の自民党版が起きたということなんですね。
──それにしても市場は安倍政権を大歓迎しました。

 ええ、株価が一気に1万円台まで回復しましたからね、これはすごいことです。もともと新政権になれば、何か景気対策をしてくれるのではという漠然たる期待感がある。ですから金融緩和の期待が高まれば、そこに海外の投機筋は「これは絶好の儲け時だ」と、日本の株を購入するわけです。マーケットは選挙が終わったとたんに株価は下がると予測していたんですが、ところがどっこい議席数が自公で3分の2を超えたもんですから、再び期待が高まった。この1カ月の株価の上昇率は世界中で日本がトップなんです

──安倍総裁は「輪転機をぐるぐる回して、無制限に紙幣を刷る」とか、「建設国債は日銀に全部買ってもらう」という強気な発言をしていましたが、そんなことが可能なんでしょうか?

 ええ、原理的にはできるんですよ。もちろん日銀に直接引き受けさせるなんてことをやったら、これは世界の先進国ではありえないことです。ただ、マーケットを通せば禁じ手ではないわけですよ。例えば、これから10兆円の補正予算を組むことになりますが、そのお金は国債で賄うことになります。それをマーケットに売りに出し、その分を日銀が全部買う、結果的にそれは日銀の直接引き受けとほとんど変わらないわけなんですがね。
──「物価目標2%」で、デフレ不況を脱却して好景気に転じることができれば期待したいところです。

 はい、まず株価が上がり円安となれば、自動車、電機などの輸出産業はこれから業績が上がってくる可能性があります。早ければ13年の夏以降に給料が上がり始めるでしょう。これらの産業は子会社、系列、取引先など裾野が広いから、そこから日本経済がよくなっていけば私たちの給料も上がってくるでしょう。秋以降には広告費も入り「アサ芸」さんなどの雑誌だって助かるでしょう?
──それは願ってもないことです。

 さらに言えば、2%のインフレにするということはモノの値段が上がる、つまり、土地など不動産が上がるんです。ですから間違いなく、今後は不動産投機が起き、これから新築マンションの売り出し価格が上がってくる。お金のある人はインフレ対策のために土地や株を持つわけですよ。株、不動産を持っている人にはまたとないチャンスがやってきます。

池上彰、そうだったのか!安倍新政権(2)「生活必需品が高騰」

2013年1月7日

──何だか安倍政権で明るい未来がかいま見えてきますが。

 バラ色でしょう、と言いたいところですが、残念ながらそうは問屋が卸さないんですね。円安と株価高騰の点では、一見うまくいっているかのように見えます。そして安倍自民が大勝したため、日銀もこれは国民の声だと受け止めざるをえない。今後は物価目標を2%にするでしょう。ただ、政権の言いなりになれば、日銀の中央銀行としての独立性はどうなんだという問題が出てきます。国際的な信用を失う可能性はあります。

──しかし、誰もが久しく好景気になることを待ち望んでいます。

 確かにそうですが、本当に需要が伸びて、モノが売れて景気がよくなり、それによって物価が上がるならいいのです。でも、今のようにモノが新たに売れだしたわけでもない、給料が上がったわけでもない。その中で物価だけが上がっていくのが「悪いインフレ」なんです。2%物価が上がるということはどういうことかというと、ちょうど4年前のリーマン・ショックの直前の状況と同じなのですが、あの時のことを覚えていますか?

──確か物価が上昇して消費者が悲鳴を上げていた。

 そのとおりです。小麦の価格が値上がりしたため、パンやパスタなどの価格が上がりました。当時は投機的な流れの中で株価が上がってはいたが、給料は上がらなかったので生活が苦しくなる一方でした。さぁ、どうしようと思ったところでリーマン・ショックが起こり、モノの値段がドーンと下がったわけです。今のままでは、またリーマン・ショックが起こる前の状況に戻るという可能性が非常に高いのです。
──バラ色どころか灰色では‥‥。

 さらには円安が追い打ちをかけます。自動車など輸出業はよくても、日本は輸入産業のほうが比率が多いんです。例えば、年内に石油の取り引きをしたものが実際に日本に入ってくるのは2月の初めになります。ということは、2月中旬以降はいろんな石油製品の値段がじわじわと値上がりすることになるでしょう。
 それに電力料金も上がります。今、原子力発電所が止まっているから、石油や天然ガスを買ってコストが上がったと、電力会社は値上げ申請をしました。これは年明けにも認められることになりますが、円安になればその値上げでは足りなくなる。今後、電力料金はもっと上がります。

──他にも値段が上がるものはありますか?

 ええ、残念ながら。例えば、今、世界的に食料品の値段が上がっています。しかし、日本では値上がりしていないのは円高だったおかげなんですよ。ですから、これから食料品の値段がどんどん上がります。お父さんたちが昼食に食べている牛丼だってこれまで値下げ競争していただけに大変ですよ。すぐに値上げはできないでしょうが、円安のために牛肉を安く輸入できなくなればいくらコストを切り詰めても徐々に値上げせざるをえない。マクドナルドなどハンバーガーだって同じです。これからいろんなものの値段が上がり始めます。



池上彰、そうだったのか!安倍新政権(3)「憲法改正の布石」

2013年1月8日 09時59分

──アベノミクスは本当に日本の景気を押し上げることができるのでしょうか?

 それは、現時点ではわかりません。ただ、これまでは、とにかくモノの値段がどんどん下がっていくから、現金で持っているのが一番と考え、デフレになっていたわけです。ところがアベノミクスでこれからモノの値段が上がるから高くなる前に買おうと、人々の意識が変わって、お金が動きだせば景気がよくなる可能性は明らかにあるんです。ですが、まずとりあえずは先に物価の上昇が起こってくるので、給与所得者はまだしも年金生活者は大変ですよ。
──景気がよくなったとしても、その前に金欠で倒れてしまっては意味がない。

 株価は上がり円安になり、とりあえずよくなるように見えるでしょう。ただ、強い薬の効果で急に症状が改善したら、そのあとで思わぬ副作用が出るという可能性がある。ものすごい強烈な副作用の可能性のある劇薬でもあるんです。
──もう一つ、安倍自民の掲げる「国土強靭化計画」についてはどうでしょう?

 確かに建設業はバブル景気が起こる可能性はあるでしょう。ですが、そもそも消費税を上げてそれで借金を返そうとしたら、消費税が上がるんだからもっと借金しましょうという話になっちゃった。これは不思議な話です。

──バラまきの恩恵にあずかれればこれ幸い。期待するのはほどほどにということ?

 ハハハ。安倍政権の本当の目的は別のところにあるんですよ。今回の選挙で、「なぁーんだ、民主党は全然デフレから脱却できなかったけど、自民党になったらよくなったじゃないか」となれば、7月の参議院選挙でも大勝できるわけです。

──確かに今の流れでは民主党の逆転はありえない。

 そう、第一次安倍政権では参議院で負け、辞任に追いやられました。その時に「再チャレンジできる社会」というスローガンを掲げていましたが、今回やり直しができたご自身はリベンジを果たしたい。つまりは念願である憲法改正に持っていきたいわけです。

──それが国防軍ということなんですか?

 ええ、ただしいきなり憲法9条改正とはいきませんよね。最初は憲法改正手続きを定義した96条から手をつけて、憲法を変えやすくする。そのあと9条を変え、自衛隊を国防軍にするという計算をしている。ですから、7月の参院選で勝ちたい、何としても自公、または維新で3分の2を確保したいわけです。そのためにはバラまき公共投資だろうが、何でもやるわけです。

──安倍政権の本音が見えてきました。…
by momotaro-sakura | 2013-01-08 12:28