肺水腫

肺水腫

肺水腫(はいすいしゅ、pulmonary edema)とは、肺の実質(気管支、肺胞)に水分が染みだして溜まった状態をいう。溜まった水分により呼吸が障害され、呼吸不全に陥る

組織における「実質」「間質」ですが、その組織の機能に直接
関与する部分を実質、それを支える部分を間質と考えるのが
普通です。
肺の機能で最も重要なのは、言うまでもなくガス交換です。
日本呼吸器学会による「特発性間質性肺炎 診断と治療の
手引き」では、ガス交換に直接関与する気腔(空気の入って
いるスペース)と気腔を囲む上皮組織(空気に直接触れてい
る部分)を実質とし、それ以外の部分を間質としています。
最も小さい単位である肺胞を例に取れば、肺胞腔と肺胞上
皮細胞が実質で、肺胞の形を作っている壁である肺胞中隔は、
表面の肺胞上皮を除いて、それ以外は間質です。
肺胞を小さな部屋とすれば、室内の空間と壁の表面が実質、
壁の中身が間質と言う事になります
概要[編集]

肺にはガス交換のための毛細血管が無数に走っている。毛細血管には元々小さな穴が開いており、血液中の水分(血漿)が血管外に染みだして灌流することにより、周囲の細胞に酸素や栄養分を補給し、老廃物を回収している。正常な状態では染み出す量と戻る量はつり合っているが、何らかの原因でバランスが崩れて染み出す量が上回ると、細胞のまわりは水浸しになり、やがて肺胞や気管支に水が溜まっていく。この状態が肺水腫である。

原因[編集]

肺水腫になるメカニズムには主に心臓疾患を原因とする内因性と外傷等を原因とする外因性がある。

内因性には3つの原因が考えられる。
1.血管内圧の上昇 毛細血管の内圧が上昇して、水分が外に押し出される状態。左心不全や僧帽弁狭窄症などが原因となる。
2.血漿膠質浸透圧の低下 血液中のタンパク質(アルブミン)が減少することにより血管内に水分を留めておけなくなり、血管外に流出する状態。肝硬変やネフローゼ症候群などが原因となる。
3.血管透過性の亢進 血管壁が水分を通しやすくなり、血管外へ漏出する状態。重症肺炎などが原因となる。

外因性には有毒ガスの吸入や感電、重症外傷が多い。
1.窒息剤、びらん剤などの化学兵器による物
2.感電、重症外傷による心不全、肺の毛細血管の損傷による物
3.薬物、覚せい剤の加熱吸引、燐化水素の吸引、サイアザイド系(チアジド系)利尿薬による急性アレルギーによる物

症状[編集]
呼吸困難
ピンク色・泡沫状の痰

検査所見[編集]
聴診 - 肺野全体に水泡性ラ音が聴取される。
胸部単純X線撮影 - 肺野全体の透過性が低下し、真っ白になる。肺葉間に水分が溜まり、vanishing tumorと呼ばれる腫瘤影がみられる。心不全を合併する場合は心陰影の拡大がみられる。

治療[編集]

原因疾患の治療とともに、肺に溜まった水を引く治療が必要である。
酸素投与 - 呼吸不全の対症療法。
利尿薬 - 体内の水分を尿として強制的に出すことにより、肺から水を引き出す。
強心薬 - 心不全を改善する。



心不全



心不全とは、心臓が十分な量の血液を送り出せなくなることです。心不全によって、血流量の減少、静脈や肺の中への血液の滞留など、心臓の機能をさらに低下させる他の変化が生じます。



心不全になると、心臓は体に必要な酸素や栄養分を与えるのに十分な量の血液を送り出せなくなります。その結果、脚や腕の筋肉は疲れやすくなり、腎臓の機能も低下します。正常な状態では、動脈内の血圧は腎臓が血液中から水分や老廃物をろ過して尿中に排出できるようになっています。心臓が十分な量の血液を送り出せなくなると、血圧が低下し、腎機能が低下して、体の余分な水分を取り除くことができなくなります。結果的に、血流量が増え、機能が低下している心臓にかかる負荷が増えるという悪循環が起こります。このため、心不全はどんどん悪化します。




心不全は主に、収縮期機能不全(より一般的)と拡張期機能不全の2つのタイプに分けられます。収縮期機能不全では、心臓の収縮力が弱まり、心臓に戻ってくる血液に見合う量の血液を送り出すことができなくなります。そのため、心室内に多量の血液がたまります。それから血液は静脈内にたまります。拡張期機能不全では、心臓がかたくなって収縮後に十分広がらなくなります。心室から正常な量の血液を送り出すことはできても、かたくなった心臓は静脈から流れこむ血液を十分にためることができません。収縮期機能不全と同じように、心臓に戻ってきた血液は静脈内にたまります。これらの2つのタイプが同時に起こることもよくあります。

原因

心臓に直接影響を及ぼす障害も、間接的に影響を及ぼす障害も、心不全の原因となります。急速に心不全を起こす障害も、何年も後に心不全を起こす障害もあります。収縮期機能不全を起こし、血液を送り出す機能を低下させる障害もありますが、拡張期機能不全を起こし、血液を取りこむ機能を低下させる障害もあります。高血圧や心臓弁障害では、これら両方のタイプの心不全が起こります。

収縮期機能不全: 収縮期機能不全を起こす障害では、心臓全体あるいは一部が損傷を受けており、結果として心臓は正常に収縮できません。

冠動脈疾患が、収縮期機能不全の一般的な原因です。心筋は正常な収縮に酸素を必要としており、酸素が豊富な血液の流量が減少すると、広範囲の心筋が損傷します。冠動脈の閉塞は、心筋を破壊する心臓発作を起こします。結果として、損傷した部位の心筋は、正常な収縮ができなくなります。

心筋炎は、細菌、ウイルス、あるいはその他による感染症が原因で生じ、心筋の全体あるいは一部に損傷を与え、心機能が低下します。

心臓弁障害とは、心臓の弁のすき間が狭くなり(狭窄)、心臓を通る血流が妨げられたり、弁を通って血液が漏れたり(逆流)することで、心不全を起こします。弁の狭窄も血液の逆流も、心臓にはひどい負荷がかかるので、次第に心臓は肥大して十分収縮できなくなります。心臓の左右を隔てる壁に異常な通路(中隔欠損)があると、心臓内で血液が再循環することになり、心臓の負担が増すため、心不全の原因となります。

心臓の電気伝導系に起こる障害は不整脈を生じさせ、特にその拍動が速くなったり不規則になった場合には心不全を引き起こします。心拍が異常になると、心臓は血液を十分に送り出せなくなります。

肺高血圧症など、一部の肺疾患では、肺の血管が変化し、損傷することがあります。その結果、心臓はさらに激しく収縮して、肺動脈内に血液を供給しようとします。肺高血圧症は肺性心を起こすこともあります。この障害では、肺に血液を供給する右心室が肥大し、最終的には右側心不全が起こります。

急に、複数の小さな血液のかたまり、もしくは1つの非常に大きな血液のかたまりが完全に肺動脈を閉塞させる(肺塞栓症)と、肺動脈に血液を送りこむことが難しくなります。非常に大きな血液のかたまりが詰まった場合は突然死することがあります。詰まった肺動脈内に血液を送り出すために心臓にかかる負担が増すと、心臓の右側部分が肥大して右心室の壁が厚くなり、結果として右側心不全が起こります。

間接的に心機能に影響を与える障害には、赤血球やヘモグロビンの不足(貧血)、甲状腺の活動過剰(甲状腺機能亢進症)、甲状腺の活動不足(甲状腺機能低下症)、腎不全などがあります。赤血球には、肺から全身の組織へと酸素を運ぶために役立つヘモグロビンが含まれています。貧血では、血液が運べる酸素の量が減少するので、正常時と同じ量の酸素を組織に供給するため、心臓はより激しく収縮しなければなりません(貧血には、胃潰瘍による慢性出血などさまざまな原因があります)。甲状腺機能亢進症では、心臓が過剰に刺激されて速く拍動しすぎるため、拍動ごとの間に心房や心室がきちんと空になりません。甲状腺機能低下症では、甲状腺ホルモンの量が低下します。心臓を含む全身の筋肉は甲状腺ホルモンによって正常な機能を維持しているため、すべての筋肉が結果的に弱くなります。腎不全では、腎臓が血流から余分な水分を取り除くことができなくなるため、心臓はより多くの血液を送り出さなくてはなりません。最終的に心臓が限界を超えると心不全に至ります。

拡張期機能不全: 拡張期機能不全が起こる最も一般的な原因はうまく治療されていない高血圧です。高血圧では、普段よりも高い圧力に抵抗して動脈内に血液を送りこまなくてはならないため、心臓にかなりの負荷がかかります。その結果、心臓の壁は肥厚し、かたくなります。かたくなった心臓は素早く十分な血液を満たすことができず、収縮するたびに送り出せる血液の量が少なくなります。

加齢とともに心臓の壁はかたくなる傾向にあります。高齢者によく起こる高血圧と、この加齢による心臓の壁の硬化を併発すると心不全が起こります。このタイプの心不全は、特に高齢者によくみられます。

心不全は、浸潤や感染症など、心臓の壁をかたく変化させるような障害によって起こることがあります。たとえば、アミロイドーシスでは、正常な場合は体内に存在しない異常なタンパク質のアミロイドが体中の組織に入りこみます。仮にアミロイドが心臓の壁に入りこむと、壁はかたくなり心不全が起こります。熱帯性気候の諸国では、心筋の内部に特定の寄生虫が入りこんで心不全が起こることがあり、これは若年者にも起こります。大動脈弁狭窄症などの一部の心臓弁障害では、心臓から押し出される血流が減少します。その結果、心筋はさらに激しく働かなくてはならず、肥厚して拡張期機能不全が起こります。最終的には、収縮期機能不全も起こします。

収縮性心膜炎では、心臓の外側を覆う袋状の心膜が硬くなり、正常な心臓の血液の出入りを阻害します。

代償機構

体には心不全に対応する代償機構が数多く備わっています。心不全を含めた負荷に対する体の最初の反応は、「攻撃‐逃避」ホルモンであるエピネフリン(アドレナリン)とノルエピネフリン(ノルアドレナリン)の放出です。たとえば、心臓発作で心筋が損傷すると、これらのホルモンがただちに放出されます。エピネフリンもノルエピネフリンも心臓を速く強く拍動させ、心臓から送り出される血液の量(心拍出量)をときには正常な量にまで増やすことで、低下した心機能を部分的にかつ一時的に補います。

心疾患のない人では、短期的に心機能を高める際などにこれらのホルモン放出が役立ちます。しかし、慢性心不全の人では、こうした反応は、すでに損傷している心臓の負担をさらに増やし、時間の経過とともに、心機能の低下を引き起こします。

心不全に対するもう1つの主な代償機構は、腎臓での塩分と水分の排泄量を減らすことです。塩分と水分を尿中に排泄する代わりに保持することで、血流量が増え、血圧を維持するのに役立ちます。また、血液量が増加すると心筋が伸びて、心房と心室、特に心臓から血液を送り出す心室が肥大します。心筋は伸びるにつれて、いっそう力強く収縮します。最初、この代償機構は心機能を改善しますが、ある限界を超えると、伸びすぎた輪ゴムのように、伸長はもはや心臓の収縮を助けることはなく、心臓の収縮力は弱まります。その結果、心不全は悪化します。

さらに異なる重要な代償機構は、心室の筋肉の壁を厚くする心室肥大です。心臓が激しく働くと、心臓の壁は数カ月間ウエイトトレーニングをした後の上腕二頭筋のように肥大し、厚くなります。最初、心臓の壁が厚くなったために心臓はより力強く収縮できるようになりますが、肥厚した心臓の壁は徐々に硬くなり、拡張期機能不全が悪化します。ついには、心臓の収縮力が弱まり、収縮期機能不全を起こします。

症状

心不全の症状は突然始まる場合があり、特に心臓発作による心不全の症状は突然始まります。しかし、ほとんどの心不全の症状は数日から数カ月かけて現れます。心不全は長い間安定していることもありますが、知らない間にゆっくりと進行していることも多いです。

心不全の人は、筋肉に十分な量の血液が行きわたらないため、日常生活の中で、疲労感や体力の低下を感じます。高齢者では、疲労感や体力の低下だけではなく、ときに眠気、錯乱、見当識障害などがみられます。

右側心不全と左側心不全とでは現れる症状が異なります。両方の心不全が起こっている場合でも、どちらか一方の症状が強く現れることがあります。右側心不全では、足、足首、脚、肝臓、腹部に体液がたまって腫れやむくみが生じるのが主な症状です。体液がたまる場所は、余分な体液の量と重力のかかり方によって異なります。立っている場合は、脚や足に体液がたまります。あお向けに寝ている場合は、普通は背中の下部にたまります。体液の量が多い場合、腹部にもたまります。肝臓や胃に体液がたまると、吐き気や食欲不振が生じます。最終的には、食べたものが十分に吸収されず、体重が減り、筋肉が衰えます。この状態を心臓性悪液質といいます。

左側心不全では、肺の内部に体液がたまり、息切れが起こります。最初、息切れが生じるのは運動中だけですが、心不全が悪化するにつれて、より軽い運動でも息切れが生じ、ついには安静時にも息切れが起こるようになります。重い左側心不全の人は、横になっていても息切れがする(起座呼吸)ことがありますが、これは重力によってより多くの体液が肺の内部に移動するためです。そのため、患者はよく起き上がり、あえいだり喘鳴(ぜんめい)がみられます。これを発作性夜間呼吸困難といいます。座ることで体液の一部が肺の底部に流れ出るため、呼吸は楽になります。最終的には、左側心不全によって右側心不全が起こります。

肺の中に大量の体液が急にたまることを急性肺水腫といい、ひどい呼吸困難、速い呼吸、青白い皮膚、気分が落ち着かない、不安感、窒息などが起こります。人によっては、気管支けいれんや喘鳴がみられることがあり、この状態を心臓喘息(しんぞうぜんそく)といいます。喘息とよく似た症状ですが、原因はまったく異なります。急性肺浮腫は命にかかわる緊急性の高い病気です。

心不全が進行すると、チェーン‐ストークス呼吸(周期性呼吸)が起こることがあります。このあまりみられない呼吸パターンでは、最初は速く深い呼吸ですが、徐々にゆっくりとした呼吸になり、その後は数秒間まったく呼吸をしなくなります。チェーン‐ストークス呼吸は、脳への血流が減少し、呼吸を調節する脳の部位に十分な酸素が行きわたらないために起こります。

心臓が心室から正常な量の血液を送り出せなくなると、心室内の血流が遅くなって、血液のかたまりができます。この血液のかたまりが心室から流れ出て塞栓となり、血流を通って移動すると、体内のどこででも、動脈の一部もしくは全体が閉塞する可能性があります。もし脳へ行く動脈がこの血液のかたまりで閉塞すると、脳卒中が起こります。

診断

医師は普通、臨床症状に基づいて心不全を疑います。診察で、弱く、多くは速い脈拍、血圧の低下、聴診器で確認できる心音の異常および肺への液体貯留、心臓の肥大、頸(けい)静脈の拡張、肝臓の腫大、腹部や脚の腫れやむくみなどがあれば、診断を裏づけることになります。胸部X線検査では、心臓の肥大と肺への液体貯留がみられます。

普通は心機能を調べる検査も行います。たいてい心電図検査(ECG)で、心拍が正常かどうか、心室の壁が厚くなっているかどうか、心臓発作を起こしていないかどうかを調べます。

超音波を使って心臓の画像を描き出す心臓超音波検査(心エコー)は、心拍出量や心臓弁の働きなど、心機能を評価するのに最も優れた検査法の1つです。この検査で、心臓の壁が厚くなっているかどうか、心臓弁が正常に機能しているかどうか、心臓が正常に収縮しているかどうか、異常な収縮をする心臓の部位があるかどうかなどがわかります。心エコーは、心臓の壁の厚さと駆出分画を評価することで、心不全が収縮期機能不全によるものか、拡張期機能不全によるものかを判断するのに役立ちます。駆出分画とは、1回の拍動で心臓から送り出される血液の割合のことで、心機能を測る重要な方法です。正常な左心室の駆出分画は約60%です。駆出分画が低い場合は収縮期機能不全を、正常または高い場合は、拡張期機能不全を疑います。

核医学画像検査や血管造影検査を伴う心臓カテーテル検査といったその他の検査法は、心不全の原因を突き止めたい場合に行うことがあります。まれに、アミロイドーシスで起こるような心臓への浸潤や、細菌やウイルスなどの感染症による心筋炎が疑われる場合に、生検が必要になります。

予防と治療

高血圧、重度の貧血、甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症など、心不全の原因となる病気は心不全を起こす前に治療できます。冠動脈疾患を治療して心臓発作を防ぐことは、心不全を防ぐことにもなります。

心不全はほとんどの人にとって慢性的な病気ですが、日常生活をより快適にし、生活の質を改善し、寿命を延ばすためにできる対策はたくさんあります。治療の柱となるのは、心不全の原因疾患の治療、心不全の悪化因子の調節、心不全そのものの治療です。

原因疾患の治療: 心不全の原因が、心臓弁の狭窄や漏れ、心房や心室の中隔欠損である場合は、たいてい手術が実施されます。冠動脈の閉塞に対しては、薬物療法、手術、血管形成術が行われます。血圧を下げ、高血圧を調節するために降圧薬が使われます。一部の感染症には抗生物質が有効です。貧血は、胃潰瘍の治療や鉄剤の服用で治します。甲状腺機能亢進症には、薬物療法、手術、放射線療法を行います。甲状腺機能低下症に対しては、甲状腺ホルモンを服用させます。

心不全の悪化因子の調節: 心不全の悪化因子のいくつかは、生活スタイルの変更によって最小限にしたり影響を食い止めることができます。心不全の人は、激しい運動ができないにしても、できるだけ体力を維持するよう心掛けるべきです。軽い心不全の人は、医師に指示された運動プログラムを実施します。より重い心不全の人は、心血管系リハビリテーション施設で専門家の指示の下で運動します。

心不全で肥満の人が運動すると、運動中は心臓にさらに負担がかかるため、心不全が悪化します。このような人では減量のための食事療法が必要です。

喫煙は血管を傷つけ、心臓発作の危険性を高めます。大量のアルコールは心臓に直接悪影響を与えます。したがって、喫煙と飲酒は心不全を悪化させるのでやめるべきです。

運動、減量、禁煙は、冠動脈疾患のリスクを減らすだけでなく、糖尿病の調節に役立ち、コレステロール値も低下させます。

塩分の多い食事は体液が停留する原因となり、排泄する水分の量を増やす利尿薬などの治療効果を打ち消して、体液がたまってしまいます。したがって、塩分の過剰摂取は症状を悪化させます。心不全の人はほぼすべて、食卓塩や塩辛い食べもの、調理の際の食塩の使用を制限する必要があります。加工食品に含まれる塩分量はラベルを読んで確認できます。重い心不全の人は普通、どの程度食塩の摂取を制限するか、詳しく指示されます。食塩の摂取量を制限している人でも、体液がひどくたまっていなければ、普通に水分を取ることはできます。ただ、余分な水分は取らない方がよいでしょう。

体にたまった体液を調べる、簡単で信頼性の高い方法は、毎日体重を測ることです。心不全の人は毎日、できるだけ正確に体重を測るよう医師に指示されます。典型的には、朝起きて排尿した後、朝食の前に測定します。毎日同じ時間に同じ体重計を使い、同じような重さの服を着て体重を測り、毎日の体重を記録すれば、体重の変化の傾向を簡単に把握できます。1日あたり約1キログラム以上の体重増加は、体液の貯留を示す早期の警告です。1日あたり約1キログラムといった一定した急激な体重増加は、心不全の悪化を示します。

食塩摂取を制限しても、腫れやむくみが生じる人はたくさんいます。その場合、腰掛けるときは、腫れた脚を台の上などに乗せて高くしておくべきです。この姿勢によって体は余分な体液を再吸収し、排泄しやすくなります。人によっては、体液がたまるのを防ぐ弾力性に富んだストッキングの着用も必要です。肺の中に水分がたまっている場合は、枕を重ねて上体を高くして寝るか、ベッドの頭の方を高くして寝ると、楽に眠れます。

心不全の治療: 心不全は、数種類の異なる薬を使って治療します。心不全は急に悪化することがあるため、心不全の治療に成熟した専門の医師や他の医療専門家に継続的にみてもらいましょう。たとえば、米国では看護師が心不全の患者に定期的に電話をかけて体重や症状に変化はないかどうか確認しますが、これはその患者が医療機関を受診する必要があるかどうか判断するためです。



急性心不全の治療: 突然発症した心不全や急激に悪化した心不全に対しては、病院での緊急治療が必要です。

急性肺水腫を起こしている場合は、酸素吸入を行います。利尿薬を静脈内注射し、ニトログリセリンなどの薬を静脈内投与するか舌下投与することで、症状は急速かつ劇的に改善します。モルヒネは、急性肺水腫に伴って生じる不安感を和らげるだけでなく、呼吸数や心拍数を低下させ、血管を拡張させて心臓にかかる負担を軽減します。これらの治療を行っても呼吸が十分に改善しない場合は、気管内挿管を行い、人工呼吸器によって呼吸を補助します。

より症状が重く、治療がうまくいかない場合は、心臓の収縮を刺激するために、ドパミンやドブタミンといった、エピネフリンやノルエピネフリンと似た作用のある薬や、ミルリノンやアムリノンといった心筋の収縮力を高める薬を短期間使用する場合もあります。これらの薬は長期間の治療には有用ではありません。

終末期のケア: 心不全患者の多くが何年も生き続けることができるとはいえ、70%もの人が10年以内に死亡します。患者の余命は、心不全の重症度や、原因疾患が特定できたかどうか、行われた治療法などによって異なります。軽度の心不全では約半数が少なくとも10年は生きることができ、重度の心不全では約半数が少なくとも2年は生きることができます。慢性心不全の人では結局、生活の質が低下し、有効かもしれないさらなる治療法の実施が制限されることがあります。特に高齢者に対し、心臓移植は実施できません。結局、延命を試みるよりも患者が快適な状態を保つことの方がより重要になってきます。患者や家族も治療方針の決定に参加する必要があります。思いやりのあるケアを行い、できるだけ症状を和らげ、患者の尊厳を守るためにできることはたくさんあります。

心不全では、症状が悪化しなくても、突然予期せず死亡することがあります。したがって、心不全の人はできるかぎり、自分自身の意思決定ができなくなった場合に備えて、その場合にどのようなケアを望むかについて、事前指示書(アドバンス・ディレクティブ))を用意しておくべきです。また、ときには見直したり書き直すことも重要です
by momotaro-sakura | 2013-09-20 09:36 | 健康管理/先端医療