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住民と一体になった文化財活用のまちづくり

住民と一体になった文化財活用のまちづくり
茨城県真壁町
町長 平間小四郎

 真壁町は、茨城県の西部に位置し、筑波山系のすそ野に広がる人口約二万人の自然豊かな町で、国指定史跡「真壁城跡」の名が示す通り、古くから城下町として栄えてきた。町内には蔵や町屋、門など、歴史をしのばせる古い建物が数多く残っており、有形文化財に登録することにより保存活用を図っている。主な産業は、加波山から産出される良質の花こう岩(御影石)を利用した石材業で、墓石や灯ろうなどの加工製品はほぼ全国に出荷され、生産額は日本一を誇っている。
 町の大字真壁地区とその周辺には、歴史的建造物が数多く残っていたが、近代化とともに徐々に取り壊されてきた。約十年前、住民から保存を求める声が高まり、住民団体が結成され、街並み保存運動が開始された。それを受け、数多くのまちづくりを考える団体が設立され、町もこれに合わせ、平成八年十月に始まった国の有形文化財登録制度に取り組み、毎年十五棟前後の登録を申請することとなった。

登録文化財が全国町村第一位に
 登録文化財制度は、従来の指定制度に比べて規制が緩やかであり、文化財を自由に活用できるのが特徴となっている。当初、登録に対し拒否反応を示す所有者もいたが、住民団体の啓もう活動や登録されても生活に支障がないことが分かると、登録に対し積極的に対応してくれるようになった。
 平成十一年度に登録作業を開始し、これまで七十四棟の登録・答申を受けている。同十三年度には登録数が五十件を超え、登録数全国町村第一位となった。
 一方で、歴史的建造物の建築技術者育成のため、ふるさと文化再興事業に取り組み、真壁町郊外で材料の調達からしっくい仕上げまで含めた土壁講座を開催し、全国から多数の受講者を集めている。

異業種交流による「夜祭り」を開催
 保存運動とともに、活用の方策を示したのも地域住民であった。地元商店会が、歴史的建造物を案内所兼休憩所として活用を始めると、個人も石蔵を利用した布の展示場をオープンさせるなど、広がりを見せ始めている。
 また、異業種間の交流も広がっており、地場産業である石材業者が商業者と連携し、登録文化財の多く残る通りに明かりのともる石灯ろうを配置した「まかべ夜祭」を開催した。さらに地域の一般家庭が協力し、江戸時代から平成までのひな人形を展示した「蔵の街・真壁のひなまつり」の開催など、街並みを活用したまちづくり(人づくり)が着々と進んでいる。
 ソフト事業の展開ばかりなので、新たな拠点施設を建設するといった派手な取り組みはないが、住んで住みやすく誇れるまちづくりをテーマに、町民と行政とが一体となって着々と進めてきたことが、今回の総務大臣表彰という形に表れたものであると感じている。
by momotaro-sakura | 2005-09-30 10:00