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高齢者「給付金」 新たなバラマキ許されぬ

主張
高齢者「給付金」 新たなバラマキ許されぬ

2012.6.15 03:06産経ニュース

[家族・少子高齢化]
 社会保障と税の一体改革をめぐる与野党の修正協議で、自民党が提案した低所得の高齢者向け「給付金」ほど、不可解な制度はない。

 「給付金」は年金制度とは切り離すが、年金保険料の納付実績に応じて支給する方向で調整が進められているという。民主、自民、公明3党の主張を取り込んだ結果だ。低年金の高齢者だけに現金を配る、新たなバラマキ政策になりかねない。年金でないのに、なぜ納付実績を基準とするのか。高齢の低所得者だけ優遇するのも根拠に乏しい。

 これでは、無年金者や困窮する若い層との公平性が損なわれる。高齢になれば現金を受け取れるのでは、勤労意欲にも影響する。

 結果的に、自民党がバラマキだとして白紙撤回を求めている民主党の「最低保障年金」と極めて似通った制度になる。低所得者の年金加算を提案する公明党に歩調を合わせたようにみえるが、自民党が掲げる「自助・自立」路線と整合性はとれるのか。

 そもそも、与野党修正協議で自民党に求められていたのは、社会保障費の膨張を加速させようとしている政府提出法案の問題点をただし、現実的な案へと転換させることであったはずだ。

 社会保障制度改革で問われているのは、高齢化に伴って伸び続ける年金、医療、介護費用をどう抑制していくかである。

問題なのは、70~74歳の医療費窓口負担の2割への引き上げやデフレ下で年金額を下げる自動調整の仕組みの導入、年金の支給開始年齢の引き上げなど、政府案が先送りした負担増や給付削減項目に関する議論が、3党の間から聞こえてこないことだ。

 こうした修正を政府・民主党に迫ることこそ、中でも、責任野党たる自民党の役割だろう。「給付金」を浮上させるようでは、自民党も社会保障切り込みに及び腰だと見られても仕方あるまい。

 高齢者が激増する一方で、働き方が不安定な若者が増え、制度の支え手の足腰は弱ってきている。健康保険組合の9割が赤字となるなど、勤労世代の負担も限界に近付きつつある。

 高齢者を含め、支払い能力に応じて負担する仕組みに改めていかなければ、社会保障制度そのものが維持できなくなる。3党協議は、国民に痛みを求める改革案から逃げてはならない。

by momotaro-sakura | 2012-06-15 08:50